メンバーの力を最大化できるリーダーは何が違うのか。『トヨタリーダー1年目の教科書』から、トヨタのリーダーが徹底する人間関係の4つの心得を紹介しよう――。

※本稿は、OJTソリューションズ『トヨタリーダー1年目の教科書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

ドイツにあるトヨタのディーラー
写真=iStock.com/ollo
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メンバーには、それぞれバックグラウンドがある

今年配属されてきた新入社員の二人。どちらも採用試験でも着ていたと思われる紺のスーツに短く整えられたヘアスタイル。

彼らは自分の席を探すように、フロアを見回しています。迎え入れる側の私たちの目には、どちらも同じような若者に見えてしまいます。

言うまでもありませんが、二人はまったく別の人格を持った人間として、そこに存在しています。

もちろん、この二人だけではありません。フロアにいるすべてのメンバーは異なる家庭環境で育ち、異なる学校生活を送ってきました。

海外留学を経験した人もいれば、幼い頃から病気がちで入退院を繰り返しながら成長した人もいるでしょう。今、職場で同じ空間にいるのは、さまざまな人生を歩んできた人たちです。

マネジメントは「相手を理解することから」

リーダーの立場からすれば、メンバーみんなが「仕事が最優先」であってほしいところですが、そうとは限りません。一人ひとり、価値観は多様です。仕事のスキルアップや昇進を第一に考えているメンバーもいれば、なるべく早く会社から帰って家族との時間を大切にしたいと考えているメンバーもいます。仕事はお金を稼ぐ手段と割り切って、趣味にエネルギーを注ぎたいと考えている人もいるでしょう。

それぞれのメンバーが別の人間であることを受け入れ、それぞれが異なる価値観を持っていることを尊重してコミュニケーションすることが、リーダーとしての心構えの第一歩になります。

さて、先ほどの新入社員の二人が同じように見えているのは、私たちが、まだ彼らのことをよく知らないからです。

生い立ちや性格、趣味などの彼らのバックグラウンドを知り、二人の個性がわかってくるにしたがって、どのように仕事を教えたら良いか、ほめるときや叱るときはどんなことに気をつければ良いか、どう接したら安心して前向きに仕事に取り組んでくれるのかわかってくるでしょう。