男女賃金差が大きい企業を男子学生も敬遠する納得の理由

一方、男子学生はどうでしょうか。過去に共学の大学で教えていた経験から言えば、賃金差の大きい企業は男子学生からも敬遠されるでしょう。なぜなら、男性は総合職、女性は一般職と区別されていて賃金差が大きい企業を、今の男子学生は「男が無理に働かされる環境」と捉える傾向が強いからです。

会議室で居眠り
写真=iStock.com/YinYang
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昭和の時代のように、男性だという理由だけで転勤も残業も含めて無限定に働かなければいけないのかと感じるのです。今の男子学生の多くは、「男女の賃金差が大きい=男性が昇進しやすくて有利な環境」とは考えません。「男女の賃金差が大きい=男性にとってもしんどくて不利な環境」と考えるのです。このあたりの価値観は、昭和生まれの世代とは大きなギャップがあるのではないかと思います。

30~40代の転職希望者にも影響は大きい

男女賃金差の公表義務化は、転職市場にも影響を及ぼしそうです。この数値は、男女問わず30~40代の転職希望者に注目されるのではないでしょうか。この世代には、出産後もキャリアアップしていきたいと考える女性や、育児をしっかりやりたいと考える男性が増えています。

ですから、男女賃金差の数値は、2023年から公表が義務化される男性の育休取得率と併せて、「ワークライフバランスのとれた働き方ができる会社かどうか」の重要な指標として機能していくのではないかと思います。

今後、男女の賃金差を放置したままの企業は、優秀な人材を採用できないだけでなく流出のリスクも高くなるでしょう。賃金差があってそれが可視化されたら、人材獲得の面だけでなく、企業イメージにも決してプラスにはなりません。

その意味で、今回の賃金差の公表義務化には、そうした企業を改善に向かわせる効果があるのではと期待しています。時間はかかるでしょうが、改善に取り組む企業が増えれば、いずれは日本全体の男女賃金差も縮まっていくのではないでしょうか。

各企業の中で賃金差を解消していくには、総合職と一般職の区別をなくしていくという方法が考えられます。一般職で働いていきたいという女子学生もいますが、この職種はすでに先細りが始まっています。志望者がいるいないにかかわらず、企業はいずれ職種の違いをなくす方向へ進んでいくでしょう。それが賃金差の解消にも役立つはずです。