部屋に入るやいなやひざまずく女性の「お辞儀」
そういう意味で、印象に残っている相談者がいます。
その方、50代の女性は、部屋に入るやいなや「拝」を通り越し、「今日はよろしくお願いします」と床にひざまずきました。
私が慌てて立ち上がるよう促すと、丁寧にお礼を言って姿勢良く席についたのです。きちっとした人だな……という印象を受ける一方で、緊張されているのか目を合わせてくれません。
いざ鑑定を始めると、相談内容は家族の悩みでした。
不摂生な生活を続ける旦那さんの健康が心配。転職したばかりの息子さんの考え方がわからないという悩み。
ただ、気になったのは話の締めくくりです。どのエピソードも最後は必ず「私はこう思うんです」「私はこういうふうに伝えているんです」という言葉が出てきて、自分の常識で家族を推し測っている様子が伝わってきました。
世の中にはいろいろな人がいます。それは家族でも変わりません。考え方や価値観の違いがあり、それを認めたところから悩みの解決の糸口が見えてくるものです。
しかし、相談者の女性は自分の常識にこだわっているようでした。
そんな自分の正しさをアピールするがごとくお辞儀は深く、立ち居振る舞いは美しい。ところが、目が合うはずのポイントで目が合いません。
運気を上げるポイントは「目線」
そこで私は、「相手の目を見て話を進めるようにするといいですよ。目を見て話すと、相手の考え方がより理解できるようになります」とアドバイスしました。
すると、しばらくしてから「油井先生、夫のことも息子のことも取り越し苦労でした。夫は毎日元気で仕事に出かけていますし、息子は転職した会社でうまくやっているようです。2人ともうまくいっていたのに、私が余計な心配をしていたようです」との報告がありました。
このように自分の常識、正しさへの強いこだわりや自信をもっている人は、所作は美しくても、お辞儀の際に私と目が合わない傾向にあります。
そこから見て取れるのは、常識の範囲の狭さと柔軟さに欠ける考え方です。
運に恵まれている人は、自分の常識と周囲の人の常識に違いがあることを受け入れる柔軟さを備えています。それは柔らかな所作として、見た目にも表れます。
きっちりと折り目正しいお辞儀の角度よりも、自然と目が合い、気持ちが伝わったと感じ合うこと。
マナーや形式だけを追い求めるお辞儀ではなく、会えた喜びや感謝の気持ちを目線とともに伝える。そのためには、角度よりも目線が重要です。それが運勢を上昇させるお辞儀のポイントです。