不当な接触に遭うリスクがあることは理解しているが…
さて、この報道のあった直後には、「ホステス」が「性被害」による「PTSD」を「今になって」訴え出たことに対する違和感を口にする者も多かった。ホステスがごく一般的な別の仕事よりも性的な視線にさらされたり、時に不当な接触に遭うリスクを負っているのは、本人たちだってわかっている。それは航空会社のクルーが一般的な仕事よりも飛行機事故に遭うリスクが高いとか、バスガイドが交通事故に巻き込まれるリスクを伴うとか、アイドルは変質的なストーカーに狙われがちだとかいう時と似ていて、そのリスクが高いからって実際にそうなって良い訳はない。だからホステスはブラジャー取られていいなんていう論理は池袋事件の判決の根底にあったような、その産業の中にあるアリナシの機微に全く無自覚な者たちの、雑な認識の押し付けなのである。
ちなみにこの種の話題で必ずコメントされる、「なぜ今になって」に関しては、どのような憶測も陰謀論めいてしまうので個人的にはあまり触れたくないところだが、基本的に人の怒りというのは瞬間的に生まれて消えるタイプのものから、数年後に誰かに話しているうちに燃え盛るものやそれこそお酒を飲むたびに再燃するものなど色々あるということだけは書き添えておきたい。私は昨日まで忘れていた、あの生理ナプキンを持って行った痴漢に対する怒りが現在人生でマックスである。
ホステスの給料にブラジャーを取られる料金は含まれていない
おそらく人々の違和感の正体の大部分は、ホステスの高額な時給にはそういった被害が織り込み済なのでは? といったものである。繰り返すが、ホステスの時給にちょっとした接触くらいがおまけで織り込んであったとしても、ブラジャーを取られるお駄賃は入っていない。というか尻や胸じゃなくとも、お触り自体が基本的には禁止であり、ホステスたちも仕事面接時には「うちは当然お触りなどさせません」といった趣旨の説明を受けている(ただし、ホステスの側が非常に効果的に軽く手に触れる、さりげなく太ももに指を置くなどの些細なボディタッチを利用することはある。というかハタチの頃の私のような割と倫理観の欠如したホステスは酔ったふりをして気に入った客の膝にも乗れば、その後恋人になったことがなくはない。お金を払っている側はだめ、お金をもらっている側がオッケー。アンフェアですよね? でも人生って基本的にはアンフェアな矛盾を繰り返し噛み締めることなのでそれが嫌であれば、セクキャバへどうぞ)。