事実に反する偏見と思い込みで語っていないか

もちろん、これは回答者が質問の意図を理解していない場合や、そもそもいい加減な回答をする人(どの質問に対しても最初の回答項目だけを選択するなど)も一定数存在するので、そうしたデータがあがってくることは調査ではよくあることです。

しかし、分析や公表するにあたっては、それらを精査調整するのが当然だと思うわけですが、そうした統計の取り扱いの雑さが見えてしまうと、独身者の結果ですら何かしらの誤差や恣意しい性を含んでいるのではないかと勘繰りたくなってしまいます。

それはともかく、大人たちはとかく自分たちの若い時のことはすっかり忘れて「若者の恋愛離れ」「若者のセックス離れ」などと騒ぎ立てます。お決まりの「イマドキの若いモンは……」と結びつけて納得したがるのは、古代のエジプト文明時代の壁画にも書いてあったように繰り返されるお話です。

しかし、冷静にデータを見れば、「若者の○○離れ」と言われるものの大抵は、事実に反する偏見と誤解による思い込みであることが分かります。

若者の草食化としてよく引き合いに出される「若者のセックス離れ」についても同様です。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の出生動向基本調査に基づき、1987年からの未婚男女の性体験無し率(年齢別)の推移をグラフにしてみました。

【図表2】未婚男女年齢別「性体験無し」率推移

「25歳まで性体験なし」男性はずっと童貞のまま?

これを見ると、どうやら男女とも2005年に若者の性体験率がピークを迎え、その後、各年代そろって減少しているように見えます。「若者のセックス離れ」と言いたい人たちは、この2005年を始点とした推移だけを切り取って「ほら、こんなにも減っている」と主張するわけですが、もっと俯瞰してみれば、違う景色が見えてきます。それ以前の90年代、80年代までさかのぼれば、むしろ2005年の数字のほうが異常値であって、現在は通常の状態に戻りつつあると解釈するのが妥当ではないかと思います。

むしろ着目すべきは、25歳以上の男性の童貞率の推移です。1987年から2015年まで童貞率はほぼ20~30%の割合で一定で変わっていないことです。これは、つまり、25歳まで童貞だった男性は、その後もそのまま童貞であり続ける可能性が高いということです。これは、「恋愛強者3割の法則」と対照的に、いつの時代も「恋愛最弱者3割の法則」とでも言えるでしょう。