1日の最後に自分に投げかける3つの問い

ポジティブなことを「拾いにいく」というのは、ひとつの技術です。私自身、ポジティブなことを拾うために、寝る前に今日あったことを振り返り、3つの問いを自分に投げかける習慣を持っています。この3つの問いとは……。

「今日、美しかったものは何だろうか」
「今日、やさしかったものは何だろうか」
「今日、ていねいだったものは何だろうか」

両足院の飛石
撮影=水野真澄

単に「今日はどんなことがあったかな」と漠然と振り返ると、あんなことがあって大変だったな、明日はこうしなきゃ、これもやらないとまずい、と反省や焦りが湧いてきて、ネガティブな気持ちになってしまいます。でも、この3つの問いに絞ると、かなり効果的にポジティブな面を見つけることができるようになります。私はこれを「振り返る技術」と呼び、この3つについて考える時間を持つことを大切にしています。

たとえば「美しかったものは何だろうか」という場合。空を眺めたときに流れていた雲が、なんとも美しかったなあといった自然の美しさがあります。

また人と人の関わりの中で感じることもあります。電車の中で、若者がお年寄りに席を譲っているのを見て、その譲り方が譲られる側に気をつかわせない、いわゆるかっこいい美しい譲り方だな。このような感じで、今日あった美しかったものを思い出します。

「やさしかったものは何だろうか」と振り返った場合。そういえば今朝、駅前でポケットから物を落としたときに拾ってくれた人がいたな、落ちていますよ、と声をかけてくれて、自分だったら、あんなにやさしく声をかけられるかな、ああいうのはいいなと思い起こします。

「ていねいなものは何だろうか」というのは、今日の昼に魚を食べたときに、すごくきれいに身をほぐせたなとか、あの人が本棚に本を戻すときに、本が折れ曲がらないように、すごくていねいに戻していたなとか、本当にささいなことです。

大きなイベントがなくても毎日ワクワクして過ごせる

でも、そういうささいなことに目を向けて、1日を過ごすと1日の輝きが変わります。それが習慣づくと、今度は美しさ、やさしさ、ていねいさに対して、センサーが敏感になり、感度がどんどん増していきます。今日は、どんな美しさ、やさしさ、ていねいさが転がっているのかな、と毎日ワクワクして過ごせるようになるのです。

これは大きなイベントや行事など刺激的なことがあるからワクワクするというのとは、真逆の考え方です。刺激的なことのワクワクは、にわかに起きてすぐに過ぎ去ってしまいます。日常にあるささいなことに対してワクワクできる技術を持つことが大切なのです。