曜日ごとにテーマを設定する

そもそも曜日というのは、古代中国人が万物を観察した結果、木・火・土・金・水の5要素を簡潔にまとめた「陰陽五行説」に基づいているといわれます。

Twitterの共同創業者、ジャック・ドーシー氏は、曜日でテーマを分けているという記事を読んだことがあります。

「1日を意図的に特徴づけていくことが大切」と話す伊藤さん。
「1日を意図的に特徴づけていくことが大切」と話す伊藤さん。(撮影=水野真澄)

月曜日はマネジメントの日、火曜日は製品開発とデザインの日、水曜日はマーケティングや成長、コミュニケーションの日、木曜日は人脈を築く日、金曜日は会社の文化を考える日、そして土曜日は休み、日曜日は戦略だそう。金曜日の「文化」など、週末に向かってだんだん視野が広がっているのが興味深いですね。

ビジネスパーソンの方々も、ぜひそういった曜日ごとのテーマを自分なりにつくることをおすすめします。たとえば月曜日は会議の日、火曜日はインプットの日、水曜日はアウトプットの日……、週の終わりに向けて大きなもののとらえ方ができると、翌週の目標の立て方もスケールの大きなものに変わっていくでしょう。

月曜日は会社から帰ってきたら手料理をする、火曜日は徹底的に掃除をする、水曜日は誰かに手紙を書く、というのもいいですね。

土曜日は自分を大切にする、日曜日は家族と過ごす、と週末は、より大事な部分に目を向けていくのもおすすめです。

つまり漠然と1週間をかたまりとしてとらえるのではなく、1日の中にある、よりよいものをすくいとる習慣を持つこと、また1日ずつを意図的に特徴づけていくことが大切なのです。

月の美しさは自分の手の中にある

ここでひとつの禅語をご紹介しましょう。

「掬水月在手(みずをきくすればつきはてにあり)」

唐の時代の詩人、于良史うりょうしの『春山夜月』という詩に基づいた禅語です。これは水面に映っている月、その水を両手ですくうと、お月さんは手の中にあるという意味です。月は、なかなかたどり着けない遠い存在だけど、実はまんべんなく照らしてくれていて、本当はあらゆる人に平等に届いている。ぱっと水をすくった手のひらには、お月さんが浮かんでいるじゃないか、そういう美しい漢詩です。

両足院の手水鉢
撮影=水野真澄

毎日の幸せや美しさをすくいとることの大切さは、この漢詩のイメージに似ているのではないでしょうか。

実は、この漢詩は

「弄花香満衣(はなをろうすればかおりころもにみつ)」

と対になっています。花を手折ると、花の香りが衣にしみるほど満ちてくるという意味。これも自らの働きかけによって、誰もがその幸せや美しさを感じることができるととらえられますね。

ネガティブなものをポジティブにとらえなおす

ポジティブなところに意識を向ける習慣がつくと、たとえネガティブなものに出合っても、ちょっと俯瞰して、自分なりの角度でポジティブにとらえなおすことができるようになります。いったん受けとめて、これを絶対に変えてやるぞという自信が出てくる。たとえば面倒な仕事や部下の失敗も、自分が成長するチャンス、ととらえなおせるようになるということです。

ぜひ寝る前に自分に3つの問いを投げかける習慣を身に付けてください。毎日の幸せや美しさを感じる度合いが変わってきますよ。

構成=池田純子

伊藤 東凌(いとう・とうりょう)
両足院 副住職

京都「両足院」副住職。両足院で生まれ育ち、3年間の修行を経て僧侶に。アメリカFacebook本社での禅セミナーの開催やフランス、ドイツ、デンマークでの禅指導など、インターナショナルな活動も。7月には禅を暮らしに取り入れるアプリ「InTrip」をリリース。著書に『月曜瞑想』(アスコム)がある。