大前研一●ビジネス・ブレークスルー大学学長。1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院修士課程修了。MIT工科大学大学院博士課程修了。工学博士。最新著『訣別 大前研一の新・国家戦略論』(朝日新聞出版)は「大阪都構想」の理論書でもある。

橋下 大前先生は90年代前半に平成維新の会の運動を展開された後、表の運動から退くような発言もあったかと記憶していますが。

大前 もう完全に足を洗いました(笑)。

橋下 今の僕の役割というのはじっくり腰を据えて政策の中身を考えるというよりも、さまざまな方法で有権者に訴えて、政治闘争し続けることだと思うのです。たとえば戦国武将は戦のプロですが、政治や政策の中身を考えているプロではないですよね。軍師(参謀)には軍師(参謀)の役割があるように、武将には武将の役割がある。

僕は以前から道州制を選挙の争点に掲げるべきだと言っていたのですが、先のダブル選挙でその点がさらに明確になりました。大前先生には是非もう一度平成維新の運動を起こしていただいて、志ある方々の組織化を図っていただきたいんです。道州制の中身、道筋、税制との関係や世界との比較……これらを僕にやれと言われても、僕らは槍や鉄砲を持って走り回っているような部隊ですからできるわけがない。

大前 20年前の平成維新の敗因は自ら出馬してしまったことです。「平成維新の会」として108名の候補を推薦し、私たちがつくった政策を「やります」とサインさせた。実際82人の代議士が誕生したのですが、当選したらそのままで何もやらなかった。それでカリカリきて、自分がやるしかないと都知事選に出馬してしまった。この失敗を、『敗戦記』(文藝春秋)に書いて成仏してしまいました(笑)。