すべての階層の女性比率を50%に

【木下】「すべての階層で女性比率50%」は、非常に野心的なコミットメントだと思いました。達成するための施策についてお聞かせください。

【江藤】まだ検討中の段階ですが、今後の女性躍進では、女性の意識醸成と不安払拭、能力・機会開発、上長の育成支援の3つを三位一体で行っていくことが重要だと考えています。また、多様なリーダーを生むために、リーダーの役割や要件についても見直していきたいと思っています。例えば、ハードな働き方ができる、頻度高く出張ができる、といった、これまで暗黙的に共有されていたリーダーの要件を再定義するといったことですね。

【木下】それには会社の風土醸成も大事になってきますね。従来の男性社会がなかなか変わらないと悩んでいる企業も多いようですが、どうすればいいのでしょうか。

【江藤】風土醸成は、「なぜそれをやるのか」という全員の腹落ちがカギになると思います。特にDEIは、やらされている感が出てしまうと浸透につながりません。当社では、メールマガジンやセミナー、研修などを通して、多様な視点からDEIの重要性を繰り返し発信しています。役員や社外の著名人が語ることもあれば、役員や部長が持ち回りで「自分にとってのDEIとは」を語ることもあります。強制ではなく、従業員が自発的に関心を持ちDEIの重要性に気づいていく──。そんなコミュニケーションを大事にしています。

【木下】地道な取り組みも継続されているのですね。企業の中には、まだ風土が変わっていないのに「制度を整えたから女性活躍推進は終わり」と捉えてしまうところも多いようです。

【江藤】DEIは終わりのないものです。今は男女差が顕在化しているので女性躍進がフォーカスされていますが、それを通して実現したい世界は何なのかを見失ってはいけないと思います。目標数値の達成は手段であって目的ではありません。意思決定層に女性がいることが自社の価値創造にどう影響するのか、社会にとってどんな意義があるのか。常にその点を考えながら進めていく必要があると感じています。

【木下】最後に、ダイバーシティに悩める人事関係者の方に励ましのメッセージをお願いいたします。

【江藤】私たちも課題や悩みは皆様と同じで、模索しながら取り組みを続けています。女性活躍やDEIにおける課題には、日本社会の構造的な問題も大きい。1社だけでは解決できなくても、多くの知恵を集結させれば可能になると信じています。「保活総研」などの場を活用して、皆様と情報や悩みを共有しながら、一緒に日本のDEIを実現していけたらと思います。

◆ご不明な点などございましたらお気軽に事務局までお問い合わせくださいませ。
『PRESIDENT WOMANダイバーシティ担当者の会』事務局(担当:名越)
woman-diversity@president.co.jp

構成=辻村洋子

江藤 彩乃(えとう・あやの)
リクルート 人事統括室 ダイバーシティ推進部部長

2005年入社。社内広報を担当したのちブライダル事業部に異動。マネジメント業務を通じて、組織として成果を出すことと、従業員が生き生きと働ける環境の両立に奔走する中、「“人”を軸に据え、一緒に働く人々の幸せを実現することにエネルギーを注ぎたい」との思いから人事部へ異動。2021年より現職。※肩書はイベント開催当時のものです。

木下 明子(きのした・あきこ)
プレジデント ウーマン編集長