攻撃的なクライアント編

クライアントに威張られてもおどおどしない

真の相互尊重、win-winの観点でいくと、クライアントに対しても「ノー」と言わないと、結果的にデメリットが生じます。たとえば忙しいクライアントに、わざわざ時間をとってもらい頼みごとをするとき、必要以上にへりくだってしまいがち。でも、こちら側があまりにへりくだり、あたふたしていると、攻撃的なタイプのクライアントは、こいつは責めがいがあるやつと、ほかの人には言わないような、むちゃな要求をしてくることがあります。

そういうクライアントに出会ったら、事実と意見を分けて伝えること。事実として「それはどうがんばってもできません」と伝え、「○○さんと深い関係を築けるチャンスなのに残念です」と自分の意見を述べる。ポイントはYOUメッセージではなく、Iメッセージにすることです。“あなた”を主語にしたYOUメッセージは「あなたは言い方がきつすぎる」とけんかを売っている印象を与えますが、“私”を主語にしたIメッセージは「残念です」と感情を率直にあらわせて、好印象を与えます。

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攻撃的な人に出会って、おどおどしてしまう人は、見た目や態度に出てしまうので、まず形から直すようにしましょう。

おどおどすると、つい目線を下げてしまうので、アイコンタクトをとってみる。ほかにも、ひと呼吸おく、最初の一言は相手の言葉を借りる、ゆっくりでも文章を完結させてみるといったことを意識すれば改善されるでしょう。あくまでも大人のコミュニケーションを意識してやってみることが第一歩です。

難交渉の相手にはゼロ回答にせず選択肢を与える

購買担当の人は、コストカットが自分の評価につながるわけですから、取引先に対して、とにかく値段を下げるよう攻めてきます。そんなクライアントに悩まされている人も多いでしょう。

そういった難交渉の場で、心がけてほしいのはゼロ回答にしないこと。ただ「できない」で終えてしまえば、その先につなげようがありません。相手の要求に対して「全部は無理ですが、これは大事です。それも難しければこれだけでも。かなりオリジナルですが、これもあります」と、何かしら選択肢を返すと、相手もどれどれと考えて、その中でベストなものを選んでもらえる可能性があるのです。その選択肢を渡すときも、どうでもいい選択肢だと、むしろ評価を下げてしまうので、相手が何を必要としているのか、相手の背景に興味・関心を示してヒアリングしましょう。

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たとえば「Aはないかしら」とお客様から言われて「Aは売り切れました」の一点張りで「Aと似ているDはどうですか」というのではまったく意味がありません。そうではなく「おかげさまでAは完売しました。どのような使いみちでお考えでしたか」と聞く。そして「やっぱりお聞きしてよかったです。でしたらXとYを組み合わせれば、それ以上のことができます」と言うと、相手の満足と倍の売り上げにつながります。重要なのは相手の“WHY”に着目すること。相手が必要とする、その理由がわかれば、難交渉の相手にも満足度の高い選択肢を提案できるようになるでしょう。

構成=池田 純子

大串 亜由美(おおくし・あゆみ)
グローバリンク代表取締役

日本ヒューレット・パッカード社に14年間在籍後、コンサルティング会社を経て独立。「国際的規模での人材活用、人材教育」をキーワードに、ビジネスコミュニケーション全般の企業研修などを手掛け、多くの企業から高い評価を得ている。16年連続、年間250日の研修実績がある。