あつれきを解消する3つのカギとは

ただ、こうした不満は、意欲的に働いているとは思えない時短勤務者にのみ向けられている様子。調査結果からは、「不公平だと思う」と答えた人の多くは「意欲的に働いているとは思わない」と感じていることがわかりました。逆に言えば、制度利用者が意欲的に働いていれば不公平感はかなり解消されそうです。

Q2.時短者が意欲的に働いていると思うか?

また、不公平感を覚えている人の中には、「時短勤務者が同僚との意思疎通や情報共有を心がけていると思わない」「時短制度について上司から十分な説明があったと思わない」という人も多くいました。

Q3.時短者は同僚との意思疎通、情報共有を心がけていると思うか?
Q4.時短制度について、上司から十分な説明があったと思うか?

この点も、「利用者がしっかり引き継ぎをして感謝の気持ちを示す、上司が給与が減るなどの時短勤務のデメリットをきちんと説明する、といった行動で解消していけるのでは」と木下編集長。

未利用者の不公平感を解消する上では、上司の姿勢も大きなカギになるようです。調査結果からは、時短勤務者へのサポートを個人個人の配慮に頼っている、特定の人に業務が偏らないよう見直しをしないといった上司があつれきのもとになっていることも明らかに。

Q5.上司が特定の人に業務が偏らないように見直しをしたと思うか?

加えて、時短勤務者へのサポートや仕事の負荷が増えた場合、昇給やボーナス、人事考課などに反映されるかどうかも重要とのこと。もうひとつ、テレワーク制度が普及している企業では公平感が大きいという結果も出ており、皆が自由な働き方ができているかどうかも不公平感解消のカギになりそうです。

Q6.時短者のサポートや仕事の負荷が増えた場合、昇給やボーナスがあるか?
Q7.時短者のサポートや仕事の負荷が増えた場合、人事考課に反映してもらえるか?
Q8.テレワーク制度は普及しているか

調査概要
インターネットでのアンケート調査(委託先:インテージ)を実施。対象は、過去3年以内に時短勤務者と働いた経験があり、自身は現在両立支援制度を使っていない20~49歳の非管理職、正社員、男女各150人。期間は2020年6月19~22日。

ここまでのデータから、木下編集長は時短勤務者と未利用者のあつれき解決のカギは、①時短勤務者の姿勢、②上司の姿勢、③組織の姿勢の3つにあると結論づけました。

「人事担当者の方々は、時短勤務者や管理職に向けて、①②を意識した指導や研修を行うとよいのではと思います。③については、テレワークはもはや経営戦略のひとつ。ぜひ検討を進めていただきたいと思います」

この勉強会では、出産・育休後の女性の働き方についても言及がありました。本誌でシミュレーションを行った結果(ファイナンシャルプランナー豊田眞弓氏試算)、38年間フルタイム勤務を続けた人と、退職し専業主婦を経てパート勤務した人とでは、生涯賃金に1億8000万円以上もの差が出たといいます。

今回行ったシミュレーションの設定と結果
使用データ

金額はあくまでも目安ですが、ライフイベントを迎えた女性には、退職や時短勤務には金銭的なデメリットもあると知っておいてほしいもの。人事担当者は、こうしたデータを見せて復帰を後押しするのもひとつの手と言えそうです。

両立にかかわる女性の負担を軽減するための策として、家事・育児外注コストの目安も紹介されました。本誌の試算によると、キャリア温存のために必要なベビーシッターや家事代行にかかる合計額は約1033万円とのこと。

キャリア温存コストの例

「今はこうした外注に対して補助費が出る企業もあると思います。人事担当者の方々は活用を勧めて、育休後のフルタイム復帰を後押ししてあげてください。両立支援の制度は、丁寧な家事育児ではなくキャリアを応援するためのものだと考えて、上手に運用していってほしいと思います」