お金が人格を変える

では、この「利己的なお金持ち」は、利己的だから、お金持ちになったのでしょうか。

ピフらは、実験参加者たちをペアにしてモノポリーというゲームをしてもらいました(モノポリーは、プレーヤーが、ボード上で、他プレーヤーと不動産を取引しながら、家やホテルを建設し、他のプレーヤーから徴収する家賃などから自らの資産を増やし、最終的に他のプレーヤーを破産させることを目的とします)。

モノポリー(ゲームボード)
写真=iStock.com/martince2
※写真はイメージです

実験上、ゲームはあらかじめ、参加者の一方が、短時間で対戦相手よりもはるかに裕福になるような仕掛けがしてありました。その結果、富が増えていくと、次第にその参加者は、より尊大な姿勢や仕草を見せ始め、貧しい対戦相手に見下した態度で話し始めるようになります。また、平等に分け合うよう1つのボウルに盛られた食べ物を、裕福な参加者のほうが多く食べる様子も見られたのです。

つまりここで彼らは、お金を得ることで、人が利己的にふるまうようになってしまうことを示しています。

なぜ富を手にすると、人は横柄になるのか

なぜお金が増えると人格が変わるのでしょうか。おそらくここには、ステレオタイプ(偏見、思い込み)の影響があると考えられます。

冒頭で書いたように、世界的傾向として、「裕福な人たちは、貧困層に比べて利己的な人だからお金持ちになった」と考えていることが示されています(ただし、国によってその差はあり、アメリカ、オランダ、南ヨーロッパ、日本などは、そのような考えが比較的少なく、アフリカやインド、ロシアなどにこの考え方が強い)。

このような考えを持っている人が偏っている国では、その国の政策や経済発展にネガティブな影響を及ぼす可能性も示唆されているほどです。このようにお金持ちは利己的である、という強い思い込みがある人が、実際に富を手にすると、結果として、ステレオタイプにより利己的になることが考えられます。