運動は自信につながる

運動はもちろん、脳のためだけにやるものではありません。運動をして体のコンディションが良くなると、しっかり食べて、しっかり眠れるようにもなります。そのことはすでに実感しているかもしれません。それに、脳の中で起きることがもうひとつあります。今まで取り上げてこなかった効果ですが、それは「自信」です。

何かが上手になると、当然自信がつきます。同じことが、心が元気になった時にも起きます。体が元気で、幸せな気分で、良く眠れて、心が落ち着いていて、適度にお腹がいっぱいで、集中出来て……そんな状態なら、何をするにしても成功する確率が高いでしょう。あなたもきっとそう感じていると思います。そうやって自信がついていくのです。

しかも、効果はさらに上がります。この効果というのは雪玉のようで、転がるにつれてどんどん大きくなるのです。運動のように自分にとって良いと分かっていることをやると、自分で自分を「えらいな!」とも思えます。少し無理してでもがんばった時はなおさらです。「自信」という雪玉がどんどん転がって、大きくなっていくのです。

スパイラル状に上がっていく

何かをやってみて上手くいったら、次に難しいことに挑戦する時にも、上手くいった時のことを覚えています。すると雪玉はさらに転がります。おまけに誰かが「すごい!」なんてほめてくれたら、もう止まりません。

このように、自信というのはらせん階段のようにスパイラル状になっています。しかしスパイラルには正のスパイラルと負のスパイラルがあります。体を動かすのは、正のスパイラルにするための方法なのです。雪玉を転がすためと言ってもいいかもしれません。

少なくとも3つの点が記憶に残ることを願っています。他のことは全部忘れたとしても、3つの大切な点を覚えていて下さい。

1.脳の成長は止まることがない。脳はいつでも変えられるし、成長させられます。
2.脳を助ける一番良い方法は運動です。
3.普段からスポーツをしていなくてもいいし、運動が得意でなくてもかまわないのです。脳はどんな運動をしているかは気にしません。ともかく運動さえすればいいのです。
アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)
精神科医

ストックホルム商科大学で経営学修士(MBA)を取得後、ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学に入学。現在は王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら執筆活動を行い、その傍ら有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど精力的にメディア活動を続ける。『運動脳』は人口1000万人のスウェーデンで67万部が売れ、『スマホ脳』はその後世界的ベストセラーに。

久山 葉子(くやま・ようこ)
翻訳家

1975年生まれ。神戸女学院大学文学部卒。交換留学生としてスウェーデンで学ぶ。大学卒業後は北欧専門の旅行会社やスウェーデンの貿易振興団体に勤務。2010年に夫と娘の家族3人でスウェーデンへ移住。現在はレイフ・GW・ペーション『許されざる者』、ダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム5—復讐の炎を吐く女』(共訳)などのスウェーデン・ミステリ作品の翻訳のほか、日本メディアの現地取材のコーディネーター、高校の日本語教師などとして活躍中。