19年に第1子が生まれ、男性取得者の少ない富士通では珍しく1カ月半の育休を取得した小池遼さんは、「育休から復帰したのはコロナ禍以前のこと。事務所に出社する通常勤務の状態だったため、子どもと触れあう時間が少なくなり、なついてくれなくなったんです。でも、テレワークとなり、仕事の合間に子どもの顔を見られるようになると、元通りなついてくれるようになりました。最近、子どもが保育園に通い始め、妻は仕事に復帰。妻もテレワークをしているので、平日昼間に夫婦でランチに行くことも。
普通なら、子どもが大きくなるまで2人で出掛ける時間なんてつくれませんよね。第1回目の緊急事態宣言が解除されるころ、他社から『何日から出社……』という声が聞こえ始めていたので、うちもそのうちと思っていた直後に、完全テレワーク化の発表。最初こそ驚きましたが、もう以前の勤務形態には戻れません」と、テレワークの働きやすさを強く語った。
テレワークで成果を出せるかは導入する企業の姿勢次第
梶山さん、小池さんの上司である金子敏之さんは、マネージャーの立場からテレワークという働き方をどう見ているのだろうか。
「私のチームはテレワークをうまく導入できているほうですが、そういうチームばかりではありません。業務内容によっても違うし、チーム内でもテレワークのほうが効率がいいと感じる人がいたり、出社したい人がいたりとさまざま。完全テレワークといっても、必ずテレワークしなければならないわけではありません。働き方、働く場所を自由に選べるというだけ。テレワークをベースに、皆が気持ちよく働けるように試行錯誤しながら、行きつ戻りつできればいいのではないでしょうか。
私の場合、マネージャーの仕事はテレワークだからといって何も変わりません。ただ、OJTに関しては課題が満載です。仕事を教えるだけでなく、新人とどうコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくかは大きな課題だと感じています。そうはいっても、働く場所を選べるおかげで、例えば、チームの仲間とお芝居見物するために、皆で会場近くのサテライトオフィスで開演時刻まで仕事を行い、時間になったら仕事を切り上げ、観劇するなんてことも。コミュニケーションが取りづらくなったとは一概に言えません」
取材した金子さんのチームは、テレワーク導入成功の一事例にすぎない。テレワークになったからといって、いいことばかりではなく必ずしも仕事の成果が上がるわけではない。しかし、育児や介護に携わる従業員、ライフステージの変化に影響を受けやすい女性にとって、テレワークで働きやすい環境づくりができるのは確かなこと。気になる業績も、たった1年で測れるものではないが、売上収益こそ前年同期比0.1%減の8019億円だが、営業利益は同51.5%増の337億円と業績は好調。テレワーク化の是非が問題ではなく、テレワークを導入する企業側の姿勢が問われるべきではないだろうか。今一度考えてみてほしい。
撮影=小禄 慎一郎