社員の満足度が高いなら、会社が舵を切るしかない
完全テレワーク化を含む“Work Life Shift(ワークライフシフト)”と呼ばれる働き方改革を主導しているのが、執行役員常務・最高人事責任者(CHRO)の平松浩樹さん。富士通が完全テレワーク化の道を選択した背景を伺った。
「テレワークの可能性は、社員に多様な働き方を提供することはもちろん、富士通がソリューションとしてお客様に提供するものです。顧客に提案するには、われわれが率先して実践しなければならないと動き始めたのが17年。当初は、各社員週1テレワークをめざしていたのですが、平均1割となかなか増えない現実に、『もっとテレワークをしてもらうには何が必要か』、女性を集めて討論会を開いたんです。テレワークは育児や介護をしている女性社員に好評だったので、討論会のメンバーは僕以外、全員女性。すると『女性だけがテレワークで働きやすくなるわけじゃない』と一斉に反論されて。
会社全体で取り組まないと、いつまでたっても“特別な事情のある人の働き方”という枠組みから抜け出すことができないんだと気付かされました。その後、コロナ禍により、社長をはじめ全社員がテレワークを実施。そうしてはじめて討論会で女性社員が言ったことは、こういうことだったのかと心から理解できました。今までわかっているつもりで、本質が見えていなかったんですね。システムだけ用意して、自分はテレワークをしていませんでしたから(笑)。でも、それじゃダメなんですよね。
テレワーク導入後のアンケートでは『コミュニケーションが取りづらい』『孤独』というネガティブなコメントも出てきましたが、8割の社員が『テレワークを続けたい』と回答。“ワークライフシフト”によって、単身赴任解消者約800人、ひとり親家庭や育児・介護中、配偶者の転勤で遠隔地勤務にシフトした社員が約400人。テレワークだからこそ得られる人材も多く、人材の流動性にも対応できるように。
コロナ禍が収束したからといって元の働き方に戻すのでは失うものが大きすぎます。それなら、会社がテレワークを継続できる環境整備に乗り出すしかありません。われわれはオンラインが正解と言っているのではありません。テレワークと出社勤務の両方をうまく活用していくことが大切なのだと思うのです」