その言葉に勇気をもらい、会社全体で働き方を変えていくことに。トップが意思決定を素早く行い、具体的なアクションを示せば、社員は会社側の本気度を感じ取り、自分たちでよくしていこうと動き始めるものです。逆に、本気度をきちんと示せなければ、忖度が始まってしまいます」と話す。
働き方改革をはじめ、完全テレワーク化に向け、平松さんを支え、現場の調整を行ってきたCHRO室マネージャーの猪田昌平さんは、「現在、国内従業員8万人のうち、8割に当たる6万人がテレワークを実施。通勤定期を廃止し、出社するときは実費精算。在宅勤務補助費として月5000円を支給しています。最初こそ、緊急事態宣言による義務からスタートしたテレワークですが、社員からの評判がとてもいいんです。社員同士のコミュニケーション不足は感じていますが、ガチガチにルールを定めて運用しているわけではないので、緊急事態宣言時はともかく、そうでないときは出社したい人は出社すればいい。
社内をフリーアドレス化しているので、部署を超えたコミュニケーションが取れるようになりましたし、普段テレワークで顔を合わせないぶん、出社したときに雑談する機会が増えたり、今までと違う形のコミュニケーションが生まれています。評価制度についても、成果を評価するという意味では、テレワークでも出社でも変わりはありません」と、テレワーク化における社内の様子を教えてくれた。
育休復帰後、フルタイムでもゆとりあるWLBに大満足
完全テレワーク化から1年以上経過した富士通。キャリア事業本部の3人に、テレワーク導入前後の働き方を聞いてみた。まずは、20年7月に育休復帰した梶山有紀代さん。
「以前からテレワーク制度はありましたが、使おうと思ったことはありません。妊娠中はつわりもひどく、出社がツラいことも度々ありましたが、テレワーク利用の申請をし、データ持ち出しの準備をして……と、それだけで時間が掛かり、急にテレワークに切り替えたいといっても間に合わないんです。ほかの部署では、テレワークを使いたくても上司が渋るということを聞いたことも。でも、コロナ禍となり、全社一斉テレワークに。
私は時短ではなく、フルタイムで復帰しました。復帰したときからテレワークです。最初は、テレワークという働き方の経験もないし、やっていけるか不安でしたが、実際にはじめると、ワーク・ライフ・バランス(WLB)が取りやすく助かっています。夫はコロナ禍前からテレワークなので、夫と協力しながら家事と育児を行っています。ただ、私は出社して仕事をするのが好きなので、コロナ禍が収束したら週に1度は出社したいですね」