16年ほど前に政府で本格化していた皇室典範改正の動きは、秋篠宮家長男の悠仁さま誕生とともに止まってしまった。今や、天皇陛下の次の世代で皇位継承権を持っているのは悠仁さまだけだ。神道学者で皇室研究者の高森明勅さんは「このままでは皇室には、悠仁親王殿下だけが残ることになってしまう」と危惧する――。

※本稿は、高森明勅『「女性天皇」の成立』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

「第12回子どもノンフィクション文学賞」表彰式にオンラインで出席された秋篠宮家の長男悠仁さま=2021年3月20日
写真=時事通信フォト
「第12回子どもノンフィクション文学賞」表彰式にオンラインで出席された秋篠宮家の長男悠仁さま=2021年3月20日

「必ず男子を1人以上生まなければならない」

私は何度でも言う。今の制度のままなら、皇室にはやがて悠仁ひさひと親王殿下たったお一方だけが残ることになってしまう。

そのことが、あらかじめはっきりと分かっている場合、畏れ多いが、悠仁殿下と結婚したいと考える国民女性がはたして現れるか、どうか。

しかも、必ず「男子」を1人以上生まなければ、長い歴史をもつ皇室を“自分のせいで”滅ぼしてしまうことになるという、“およそ想像を絶する重圧”がかかるとしたら。

内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持するが、配偶者や生まれてくる子は国民とする「一代限りの女性宮家」などという、政治的妥協の産物としか思えないような、残酷な制度を内親王方に“押し付け”た場合でも、悠仁殿下のご結婚相手が必ず「男子」を生まなければならない事情は、何ら改善されない。何故なら、それらの宮家がいくつかあったとしても、次の代には途絶えてしまうからだ。

どれだけお子様に恵まれても、それらの宮家からは、皇位継承資格者がただのお一方も現れない。ならば、悠仁殿下のご結婚相手が「男子」を生むしかない。

そんな条件のもとでは、悠仁殿下のご結婚は極端に困難になってしまう。普通の想像力があれば、そう考えるしかないだろう。

そしてもし、万が一にも悠仁殿下がご生涯、独身を通されるような事態になれば、皇室の歴史はそこで終わる。

それ以前に、不測の事故など決してあってはならないことでも、危機管理の観点から当然、織り込んでおくべき事柄だ。現に、いずれも幸い大事には至らなかったものの、平成28年(2016年)11月に、悠仁殿下が乗られたワゴン車が、中央道相模湖IC付近で渋滞の最後尾に追突する事故があり、さらに同31年(2019年)4月には、刃物を持った不審人物が悠仁殿下を狙って、お茶の水女子大学附属中学校に侵入する事件すら、起きている。しかし、政府も有識者会議も、そのような危険性からなるべく目をそらそうとしているようにしか見えない。

あまりにも無責任ではないか。

(母方から天皇の血筋を受け継ぐ)「女系天皇」を認めることは、もっと先延ばしできると錯覚していないか。