社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは、「残念ながら、いまの日本では、『女の子の育て方/育ち方』と『男の子の育て方/育ち方』がずいぶん違う」と指摘します。そんな上野さんが、女の子たちが日常で抱える、結婚や仕事に関する疑問に答えました――。

※本稿は、上野千鶴子『女の子はどう生きるか』(岩波ジュニア新書)の一部を再編集したものです。

結婚式
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専業主婦に憧れます!

【Q】離婚経験者のお母さんに、小さい頃から女も経済的に自立しないとだめよ、と言われてきました。正直、聞き飽きました。私は、Jリーグの選手やIT企業のお金持ちと結婚してセレブな専業主婦になりたいけど、だめですか?

【A】おお、シンデレラ願望! 女の子しか乗れない「玉の輿」。いいですねえ(笑)。
ところで玉の輿に乗るための条件があなたにありますか? 点検してみましょう。

「Jリーグの選手やIT企業のお金持ち」は自分にものすごーく自信があります。だから魅力的なんでしょうね。そういう男性は妻に自分をサポートする脇役を求めます。「内助の功」とか「女房役」とか言われてますが。だからそういう男性と結婚すると、あなたは一生、主役でなく脇役を務める覚悟が必要です。一生男子の活動を支える「女子マネ」をやるようなものですね。

それに「Jリーグの選手やIT企業のお金持ち」を狙っている女性はあなただけではありません。いくらでも女性が寄ってきますから、あなたはそれに勝ちぬかなければなりません。「Jリーグの選手やIT企業のお金持ち」は忙しくて恋愛しているヒマがありませんから、てっとりばやく外見で判断するでしょう。それに名誉やお金と同じように、妻も他人にみせびらかす効果がありますから、わかりやすい外見(他人がうらやむような美貌や体型)を選ぶでしょう。「Jリーグの選手やIT企業のお金持ち」の妻に、元CA(キャビン・アテンダント)やモデル、女子アナなどが多いのはこういう理由です。

こういう妻を、英語では「トロフィーワイフ」と呼びます。勝利の証として得られるトロフィーのような妻だからです。その典型が、元アメリカ大統領、ドナルド・トランプさんの三番目の妻、メラニアさん。もとモデルだけあってすばらしくスタイルもよく着こなしもうまい美女ですが、ほとんど口を開かないので、存在感のない女性ですね。

「Jリーグの選手やIT企業のお金持ち」は家庭を顧みる余裕がありませんから、家事育児をすべて完璧に文句ひとつ言わずに担ってくれる妻を求めます。それは若い母親ひとりの手に余りますから、実家の助けがあった方がずっと有利です。それなら同じ娘さんなら、実家に経済力や祖父母力があって援助が得られる方が安心です。それに自分の才能をのびのび伸ばすことができた男性は、もともと子どもに投資を惜しまないゆとりのある家庭の出身者が多いものです。そうなれば自分の将来の妻にも、同じような家庭環境の出身者を求めるでしょう。