キリン「氷結」を挟み撃ちしようとしていたサントリー

それまで缶チューハイ市場では、こんな戦略による戦いが行われていました。

500mlの「ホームランサイズ」も。
写真提供=日本コカ・コーラ
500mlの「ホームランサイズ」も。

いちばん売れているキリンの「氷結」がど真ん中にいるとします。「氷結」の度数はだいたい5%。そこでサントリーが考えたのは、「マイナス196℃製法」を謳った「theまるごとレモン」(7%)や「ストロングゼロ」(9%)などの、高アルコール商品を出す一方で、低アルコールの「ほろよい」(3%)で女性ターゲットを押さえること。この両方から挟み撃ちにすれば、まん中の「氷結」は動きようがなくなり、勝てるはずだという戦略だったのです。

だから「檸檬堂」登場までは、度数ごとに別のブランドを作るのが基本でした。ところが「檸檬堂」は、一つのブランドで度数違いを出すという戦法をとったのです。

新参者がど真ん中を狙ってきた

さらに常識外れだったのが、価格のつけかた。「檸檬堂」は350mlの売価がおよそ130円と、それまでの缶チューハイより20円ほど高くなっています。それまで缶チューハイはどんどんアルコール度数が高いほうにシフトしていたので、「第三のビールより安く、早く酔えるところに価値がある」というのがマーケットの常識だったのです。そこへメーカー希望小売価格 350ml缶/150円という設定をしたというのはユニークでした。だいたいプレミアム商品が成功すると、「そこにマーケットがあったのか」と後でわかるものですが、「檸檬堂」はわれわれの思い込みを裏切ってくれた。

しかし、何よりも本当にユニークなのは、初めてお酒をつくった新参者であるコカ・コーラが、「レモン味の缶チューハイ」という一番の売れ筋ど真ん中を狙ってきたことでしょう。

普通、後発のメーカーは「梅酒だけ」とか、「ハイボールだけ」というように、ニッチな周辺を狙うか、もしくはヒット商品をまねることが多いものです。

なぜこんなことができたのでしょうか。