活躍の形は管理職だけではない

【木下】すでにすばらしい制度がそろっているように思いますが、コロナ禍で何か変えられたことはあるのでしょうか。

【三瀬】2019年から上長判断で在宅勤務ができるようにしていたので、新しい制度をつくる必要はほとんどありませんでした。ただ、当社には幅広い事業分野があるので、中には在宅が可能でない部門もあります。そうした部門では、マネジメントやメンバーが工夫して柔軟に対応しながら仕事を進めています。

【木下】女性活躍に関して、今後の取り組みや目標値を教えてください。

【三瀬】管理職比率の目標値を30%に置くべきかどうか、議論を進めているところです。しかし当社では、管理職比率は女性活躍を示す要素のワンオブゼムでしかないと考えています。活躍の形は人によってさまざまで、管理職になることだけとは限りません。基本方針は、女性だからという理由でキャリアをあきらめることがないよう活躍を支援することです。

そのためにも、今後もさまざまな施策の実現に取り組んでいくつもりです。例えば今は、産休・育休から復職した方々にしっかり仕事をアサインして活躍してもらえるよう、本人と上司が話し合う機会を増やそうかと考えています。本人が活躍を望んでいるのに、上司が「今は育児で大変だろうから」と重要な仕事から外すようなことがあってはいけませんから。

また、男性育休も重要課題のひとつです。当社の男性育休取得率はまだまだ恥ずかしいぐらいのレベルなので、何が障壁になっているのかを探って、それを取り除いていこうとしているところです。

【木下】女性活躍以外にも、さまざまなダイバーシティ施策に力を入れていらっしゃるそうですね。

【三瀬】当社では、多様な人材に多様なキャリアに気づいてもらい、働きがいをもって働き続けてほしいと願っています。具体的には、海外大学生の新卒採用や65歳までの定年延長、特定子会社設立による障害者雇用の拡大などを実施してきました。また、当社は社員の4割がキャリア採用で、キャリアや働き方に対する思いも人によって異なります。それぞれの思いと会社の思いを融合させることで、皆が働きやすい環境、働きがいのある環境につながっていくのではないかと思っています。

東京都港区にあるオリックス本社から配信を行いました
撮影=小林久井(近藤スタジオ)
東京都港区にあるオリックス本社から配信を行いました

【木下】最後に、女性活躍を含むダイバーシティ施策に悩める人事関係者の方にメッセージをお願いいたします。

【三瀬】当社も必ずしも進んでいる面ばかりではなく、皆様と同じような課題も抱えています。引き続き課題解決に取り組むとともに、活躍イコール管理職と考えるのではなく、社員一人ひとりの「こうしたい」という思いが実現できるよう支援していきたいですね。会社として、また人事部の一員として、そのための手立てを考え続けていくつもりです。

構成=辻村洋子

三瀬 勝之(みせ・かつゆき)
オリックス グループ人事部長

1995年、オリックス入社。地域営業本部、広域事業部、業務改革室などの課長職を歴任したのち、2017年よりオリックス不動産にて社長補佐およびリスク統括部長を務める。2019年より現職。

木下 明子(きのした・あきこ)
プレジデント ウーマン編集長