産休・育休からの復職率はほぼ100%

【木下】女性が働き続けやすい環境はかなり早くから整備されていたのですね。ただ、その後は時代が変わり、女性がフルタイムで働くことも当たり前になりました。当時の制度をどうブラッシュアップしていかれたのでしょうか。

【三瀬】2007年には「Keep Mixed」のスローガンの下、ダイバーシティ推進専任担当を設置しました。それに伴って出産・育児制度も拡充し、育休は3歳まで、時短勤務は小学校卒業までなど、法定より少し多めに設定し直しました。これは「そのぐらいの期間が必要だ」という社員が増えてきたためです。

【木下】その結果、働き続ける女性が増え、女性管理職比率も自然に上がっていったということですね。ただ、「制度を整えても活用が進まない」と悩む企業も多いようです。御社では、各制度はどのように機能していますか?

木下明子『プレジデント ウーマン』編集長
撮影=小林久井(近藤スタジオ)
木下明子『プレジデント ウーマン』編集長

【三瀬】制度をつくっても活用されないようでは寂しいので(笑)、社員に積極的に使ってもらうための取り組みも行ってきました。産休・育休をとった社員には「安心して復帰してね」「戦力として期待しているよ」と伝えるためのセミナーや研修を、復職者には両立期以降のキャリアを描いてもらうためのワークショップを実施しています。

また、ライフイベント前から今後のキャリアを考えてもらう若手女性向けのフォーラムや、夫婦で参加する育児セミナーなども開催しています。やはり、社員に制度を知ってもらい、ためらわず使ってもらえるような取り組みが必要ではないでしょうか。現在、当社では産休・育休取得者の復職率はほぼ100%です。

【木下】家庭と仕事を両立する、いわゆるフルキャリアという考え方を推進されているのですね。中には「大変そう」と感じる女性もいるかと思いますが、そのあたりをどう教育されているのか、社員の反応も併せてお聞かせください。

【三瀬】確かに、両立は大変そうだと感じている方もいらっしゃると思います。会社としては、社員に長く活躍し続けてもらいたいと考えており、「仕事を続けたい」と思う人がキャリアをあきらめてしまうことがないように支援しています。セミナーやフォーラムを通して、会社はこんな取り組みをしていますよ、さらに必要な制度があればつくりますよ、障害があれば取り除きますよという姿勢を伝え続けることで、フルキャリアへの意識も定着していくのではないかと思います。

こうした取り組みへの社員の反応は、好意的なものが多いですね。各セミナーには必ず制度を利用した経験者を招いているので、これから利用する方々は、同じ境遇にある先輩たちがどうしてきたのかを知ることができます。オリックスでは女性社員の約4割がワーキングマザーですから、復職者は決してマイノリティーではありません。先輩の話を通して、育児中の人も活躍できる、戦力として期待されていると理解してもらえているのではと思っています。