社員が考えた施策の6割以上が実現

【木下】活躍し続けられるよう、職種転換や転勤対応なども実施されているとのことですが、具体的な内容を教えていただけますか。

【三瀬】キャリアの継続を支援する制度としては、育児や介護などと両立するため一時的に役割を限定した職種や等級へ転換できる「キャリアセレクト制度」をはじめ、配偶者の転勤に伴う勤務エリアの変更や休職、退職者の再雇用といったものがあります。誰もがずっと同じスピードで同じ働き方ができるわけではありませんから、そこは個々人の事情に合わせて柔軟に対応していきたいと思っています。

【木下】社として多様性の維持・推進を本当に重視されているのだなと感じました。先ほどおっしゃった「Keep Mixed」はダイバーシティの真髄だと思います。また、御社のトップである宮内義彦シニア・チェアマンや井上亮社長は、大変グローバルなご経験をお持ちですね。ダイバーシティ推進に際しては、こうしたトップの経験値や理解も非常にプラスに働くと思うのですが、いかがでしょうか?

【三瀬】間違いなくプラスに作用していると思います。先ほどお伝えしたような制度も、トップの理解がなければまず実現できなかったでしょう。2016年には、真のグローバル企業になりたいという思いの下、社長直轄で「職場改革推進プロジェクト」がスタートしました。

主要グループ会社10社、200人以上の社員で委員会を立ち上げ、およそ120もの施策を提言して、そのうち80ほどが実現に至りました。これも「やったほうがいいこと、できることは全部やろう」という社長の強いメッセージがあったからこそです。

【木下】具体的には、提言のうちどんなものが実現したのでしょうか。

【三瀬】6時〜22時の間で出退社時間を自由にできる「スーパーフレックスタイム制度」や、有給を1時間単位に分割して取得できる「時間単位の年次有給休暇制度」、年間6万円を上限として自己研鑽などに利用できる「自分磨き制度」、他の部署の業務を1週間体験できる「社内インターンシップ制度」などが実現しました。

【木下】人事・ダイバーシティ担当者の中には、考えた施策をトップにどう話せばいいかと悩んでいる方も多いようです。アドバイスをいただけますか?

【三瀬】皆が働きやすい環境にしようという話は、突飛でも何でもなくとても自然な話ですよね。ですから、この施策は社にとってマイナスではなくプラスなのだと、普通に説明しさえすればわかってもらえるはずだと思います。併せて、社員からこういう声が上がっていると伝えると、より説得力が増すのではないでしょうか。