1996~2012年生まれの若者は、アメリカで「Z世代」と呼ばれている。彼らの価値観は両親や祖父母とは大きく異なる。たとえば、2017年に調査対象となった当時14〜22歳の69%は、老後資金を「最優先の課題」と考えており、実際に12%(9人に1人)はすでに老後資金を貯め始めているという。アメリカの研究者らの共著『Z世代マーケティング 世界を激変させるニューノーマル』(ハーパーコリンズ・ジャパン)から一部を紹介する――。
老後資金をためる女性
写真=iStock.com/Khanchit Khirisutchalual
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「両親や祖父母ほどの成功はできない」と考えている

お金全般についてのZ世代の考えはどのようなものなのか。

アメリカのZ世代は、世界的大不況、学費ローン問題、所得の伸び悩みという、国全体の経済を揺るがす事態に強い影響を受けている。

大不況のときには、両親やその友人、地域の人々が苦しむのを見た。大勢の人が仕事と住む家をなくしたという記事を読み、大人たちが自尊心を失う姿を目の当たりにした。どうしても仕事が見つからないという話を耳にし、生活に最低限必要な賃金や最低時給15ドルを求めるデモを目にした。また、ミレニアル世代にのしかかる莫大な学費ローンは常にZ世代の口の端にのぼり、一生逃れられない経済的足かせとのイメージが固まった。

人格が形成される思春期や青年期に起こった、お金にまつわる数々の困難や事件。その結果、Z世代が金銭や借金、仕事、将来に向ける視線は上の世代と異なるものとなった。

これはアメリカに限ったことではない。日本やギリシャといった国々でも、両親や祖父母ほどの成功は得られないのではないかと話す若者は多い。国内外の問題に苦しむラテンアメリカ諸国も同様だ。さらに、アメリカをはじめとした全世界的な景気後退が、Z世代の金銭観や職業観、リタイアについての考えなどを形作った。その影響は、最近のブレグジットをめぐる議論にいたるまで、諸処に表れている。

Z世代の最年長の層については仕事や貯蓄、消費の行動データが追跡できており、分析の結果からいくつかのトレンドが見えはじめている。追跡データ以外にも、私たちの調査チームではZ世代の金銭や借金、消費などに特化した研究をいくつも実施してきた。そこで出てきた意外な結果には、上の世代とは一線を画する志向と思考が表れている。ビジネスリーダー必見の内容だ。