こういったものを含め、商法では除外されるが刑法上有価証券になるものを具体的にあげると、電車の乗車券や定期券、デパートの商品券、入場券、宝くじなど。アイドルの握手券も同じで、商法上は有価証券ではないが刑法上は有価証券になる。株や小切手とは一線を画すものの、偽造すると有価証券偽造罪に問われるのはこのためだ。

では、刑法上で有価証券とみなされるのはどこからなのか。荘司弁護士がグレーゾーンとしてあげるのは、ファストフード店で配る無料コーヒー券だ。「使えば安くなるので、紙に財産上の権利はくっついています。しかし、誰でも簡単に手に入るため市場性は限りなく低い。それに財産的価値を認めるかどうかは微妙なところ。お金を払ってでも手に入れたい人がいる=市場性があるというところが分水嶺になるのではないか」。

ちなみに有価証券でなくても、権利を行使する目的で文書を偽造すれば、私文書偽造等の罪(刑法159条)に問われる。たとえば預金通帳や個人的な借用書、手荷物預かり証は有価証券ではないが、使用する目的で偽造すれば犯罪行為。法定刑も3月以上5年以下で、有価証券偽造罪ほどではないが、けっして軽くはない。握手券が有価証券でなかったとしても、偽造をすれば罪になる恐れがある。アイドルと握手したければ、素直にCDを買ったほうが身のためだ。

(ジャーナリスト 村上敬=文 ライヴ・アート=図版)
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