ジェンダーや立場で分断されない社会を
【木下】改革を進める上では、昭和的価値観を捨てきれない上司が足かせになるという話もよく聞きます。意識改革のためには何をすればいいのでしょうか。
【及川】こればかりは根気強く言い続けるしかないと思います。当社ではアンコンシャスバイアスの見える化を目的とした研修を行っており、部下と上司で立場を取り替えてみるなどさまざまな工夫をしていますが、やはり意識改革には時間がかかりますね。対話、コミュニケーション、体験を粘り強く続けていくしかないように思います。
【木下】転勤に対しては何か工夫されていることはおありでしょうか。配偶者やお子さんがいる方に対して、配慮などはされていますか?
【佐藤】転勤配慮制度を設けており、事由のある方は会社に申し出た上で「転勤しない」という選択を取れるようになっています。ただ、これはケースバイケースで、一人ひとりと話し合ってできるだけリクエストを大事にしながら対応するようにしています。もちろん、転勤できないからといって昇進に響くことはありません。
【木下】日本の大企業の経営者はまだまだ男性が多いと思いますが、その中で及川社長はどのように立ち回られてきたのでしょうか。
【及川】私も子どもを持つ母親なので、出産や育児の際には壁もありました。でも、そのたびにすごい「鈍感力」を発揮したおかげで乗り越えてこられたのかなと思います。たたかれても笑顔で、自分の「こうしたい」という思いを口にし続けてきました。やはり鈍感力はとても大事だと思いますよ(笑)。
【木下】ダイバーシティに関する今後の目標をお聞かせください。また、ダイバーシティ推進に悩んでいる人事関係者の方に、励ましのメッセージをお願いいたします。
【及川】当社の目標は「多様な人が、健康に、イキイキと活躍する機会の創出」です。2029年の100周年に向けて、ジェンダーや立場で分断されない社会、自分と社会の可能性を信じられる「つながり」であふれた社会を実現していきたいですね。
人事担当者の皆さんには「意志があれば必ずできる」とお伝えしたいと思います。当社にできることがあれば喜んでお手伝いしますので、誰もが活躍できる社会を目指して、皆で声を上げていきましょう。
構成=辻村洋子
1991年、東京女子大学卒業後、ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。まもなく販売会社に出向し、埼玉エリアマネージャー、商品企画部長を歴任後、2012年に執行役員、14年に取締役就任。20年より現職。
1994年、ポーラ化粧品本舗(現・株式会社ポーラ)入社。営業、販売企画、プレステージ事業、組織開発、人事、経営企画を経て、2021年に新設のサステナビリティ推進室室長に就任。サステナビリティ経営の実現とコーポレート価値の向上に従事している。