「ダボハゼ」リーマンデリバティブの闇
日本時間9月30日未明、ニューヨーク株式市場が暴落して、各国政府や世界の投資家を震撼させた。
成立はほぼ間違いなしと思われていた不良資産の買い取りを柱とする金融安定化法案がアメリカ下院でよもやの否決。金融危機の深化を懸念した投資家の売りが殺到し、ダウ平均は終値で777ドルと史上最大の下げ幅を記録した。その影響はアジア市場にも、ヨーロッパ市場にも波及して株価は軒並み下落し、世界同時株安となった。
9月に入って以降、特に欧米の金融機関は異例の事態に見舞われている。15日にはアメリカ証券業界第4位のリーマン・ブラザーズ証券が破綻した。1世紀半以上の歴史を持つ名門投資銀行がつぶれたのである。
ニューヨーク市場の大暴落にかき消されて、すでに過去の話となった感もあるが、アメリカの巨大投資銀行がつぶれるというのは、世界恐慌以来なかったことだ。その意味ではショッキングな出来事だった。なによりも驚いたのは、アメリカの金融当局も、他の金融機関も、誰もリーマンを救済しなかったことだ。
過去を振り返ると、経営危機に瀕した投資銀行がいくつも消えていった。
たとえばバンカース・トラスト銀行は、1990年代前半にデリバティブ取引に傾斜しすぎて行き詰まり、ドイツ銀行に吸収された。今年3月に、破綻寸前だったベアー・スターンズを吸収合併したのはJPモルガン・チェース銀行だが、その前身は投資銀行のJPモルガンとチェース・マンハッタン銀行である。JPモルガンは、90年代にサバイバル競争に敗れ、2000年にチェース・マンハッタン銀行に買収された。
例をあげればきりがないが、これまでに変動の波はいくつもあったが、大手であるほど、ホワイトナイトが現れて救済されてきた。しかし、今回はリーマンに救いの手を差し伸べる者はどこにもいなかった。その理由は、欧米の金融機関の資金繰りが非常に厳しくなっていたからだ。昨夏のサブプライム問題に端を発した金融不安は、日を追うごとに深刻の度合いを強め、今年に入ってからは金融危機へとさらなる悪化のステージを駆け上がっていた。