※本稿は、栗田朋一『新しい広報の教科書』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
私が異業種や競合の広報と仲良くする理由
「あそこの広報担当者、顔が広いよね」と聞くと、何となく「マスコミ関係に人脈があるのかな」と思うのではないでしょうか。
確かに、かつての「広い人脈を持つ広報」は、そういう人たちでした。
しかし、これからの時代は、ちょっと違います。これからの広報はマスコミ関係者との人脈だけでなく、異業種や競合他社の広報担当者とも広くつながっていくのが主流になるでしょう。いろいろな企業の広報担当者とつながっていると、自社だけではできなかったような広報活動ができます。
たとえば、たまたま建築会社の広報から話を聞いていた、ぐるなび広報時代の私が、知り合いの記者と雑談をする中で「そういえば、あそこの建築会社、こんなおもしろいことやり始めましたよ」と言ったら、どうなると思いますか? その企業や業界と利害関係のない人からふいに聞かされると、記者たちも「へぇー、そうなんですか」と妙に構えることなく耳を傾け、「確かにそれはおもしろい。ちょっと、取材してみようかな」という気持ちになりやすいようです。
異業種からの“口コミ”が効く
アパレル会社の広報が、いくら自社製品のメリットをアピールしても、記者からしたら「それって自分の会社がつくっているものだからでしょ」という気持ちになります。でも、そのアパレル会社のジャケットを着たレストランオーナーが記者と会った際に「このジャケット、涼しいし小さくたたんで鞄に入れられるし、デザインもよくて気に入っているんですよ。最近の経営者は高いブランド品より自分の好みに合った機能性のよいものを身につける人が多いんです」と言ったら、きっとその記者は「最近の経営者の人たちには、そういう傾向があるのだろうか。おもしろい」と感じてくれるかもしれません。
逆に、そのオーナーのレストランで販売しているテイクアウトの高級ガトーショコラも本人が宣伝したのではありがたみがなくなってしまいます。むしろ先ほどのアパレル会社では、社長がいつも手土産として買い求めているのがそのお店のガトーショコラだと、さまざまな場面で話していれば、それが記者の耳にも入り、そんなセレブ御用達のものなら今度取材してみたいということになるかもしれません。そう考えると、お互いの商品をPRし合ったほうが興味を持ってもらいやすいとも言えます。
「誰が伝えるか」によって、受け取る側の関心度も変わってくるものなのです。