業界の垣根を越えた広報のつながりが“ネタ”になる

また、広報同士がつながっていると、思いがけないコラボレーションネタができることもあります。

以前、ある企業がオフィスビルから東京・代々木の一戸建てに移転したと聞きました。これだけだったら「おもしろいことをする会社もあるね」くらいの話で、メディアも取り上げません。ところが、なぜか同時期に、その企業とはまったく関係のない2社からも、「都心の一戸建てに移転しました」という連絡をもらったのです。

1社だけでなく、同時期に3社となれば、これは単なる偶然ではないのでは? と、隠れた関係性を想像するでしょう。

記者たちも、そういった「あれ、なぜだろう?」という疑問から、日々ニュースのネタを発掘しています。

「震災の影響で、高層ビルへの不安や、社員同士の絆を強くするためなのでは?」
「高齢化で空き物件が増え、それをオフィス向けに売り出したのでは?」
「裏で同じブローカーが動いているのでは?」

などと、その背景にあるものや人の心の変化を読み取ろうとするのです。1社の事例ではネタにならなくても、3社集まるとおもしろいネタになるのです。

これまでは業界や企業の枠を越えて広報同士がつながることは考えられてきませんでしたが、これからはそれが当たり前になると思います。

特に、若手の広報担当者は、学生時代からSNSに触れてきた世代なので、業界や企業に関係なくつながっていくのに抵抗感がないでしょう。これからの広報は、協力し合う広報なのです。

トラブルが起きた時の“横”の連携

私は競合他社の広報の方々と、たくさんつながりを持っていましたが、そこはやはり競合です。

ある競合企業の広報室長さんとは、とても親しくさせてもらっていたのですが、「ま、最終的にどっちかが消滅するまで、つぶし合いだよね」と、お互い笑顔で語り合うこともありました。

名刺交換
写真=iStock.com/Satoshi-K
※写真はイメージです

そんな火花の散ることすらある競合企業の広報同士が、時に連携することもあります。

あるお取り寄せグルメの商品遅配が各サイトで発生し、問題になったことがあります。そのとき、マスコミの方々から「ぐるなび食市場では、何件くらい発生していますか?」「どのように対応されるのですか? 返金には応じるんですか?」などの質問や問い合わせが、次々と入りました。

実はこのときのマスコミ対応のタイミングや発表内容は、普段はライバルとして争う企業の広報担当者と話し合い、お互いの情報発信の度合いをそろえるようにしていました。

メディアの取材は、同じ質問を複数の相手にして、その違いや差を切り口に、さらに深い質問をしてくることがあります。「A社ではここまでやっているのに、なぜおたくはできないのですか?」という具合に突っ込まれてしまうこともしばしばです。