幹部社員の意識を抜本的に変える必要

言うまでもなく男性育休が進まないのは性別役割分業意識など日本社会の風土や企業の文化・体質が深く関わっている。それを変えていくには、若い世代の社員以上に幹部社員や経営層の意識を抜本的に変えていく必要がある。とりわけ重要なのが、経営トップが前面に出て、陣頭指揮を執ることだ。

男性の育休取得率が低く、取得日数が短いと、妻が長期間育休を取らざるをえず、結果としてキャリアのハンディになり、その後の男女の格差にもつながる。女性活躍推進の観点からも男性の育休取得は緊急性が高い課題といえる。

世界経済フォーラム(WEF)が3月31日に発表した報告書の2021年版「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は156カ国中120位だった。前年の121位から一つ順位が上がったとはいえ、主要7カ国(G7)で最下位、アジアでも韓国、中国よりもさらに下に位置することが世界にさらされたことは決して喜べる話ではない。

経営者の65%「男性の家事育児参加が女性管理職を増やす」

管理職に占める女性比率を示す管理職ジェンダーでは139位と前年の131位より悪化。評価点は最も低い17.3点で経済カテゴリー全体の足を引っ張っている。全体の女性管理職比率は14.8%(総務省「令和元年労働力調査」)だが、民間企業にしぼるともっと低い。日本経済新聞が調査した大手企業の「社長100人アンケート」によると8.8%にすぎない(『日本経済新聞』4月2日付朝刊)。

女性管理職が増えない背景にはさまざまな事情があるが、同アンケートでは「性別による無意識の偏見」(50.7%)と並んで「女性に家事・育児が集中」していることを挙げた社長が44.3%もいた。ではどうやって女性管理職を増やすのか。アンケートの対策で最も多かったのは「性別偏見解消」(67.1%)、続いて「男性の家事・育児を奨励」(65%)だった。

男性の育児休業取得を推進することが、結果的に女性管理職の増加につながることを経営者の半数以上が認識していることに驚く。しかし、実態はそうなっていない。自覚するだけではなく、男性育休を促進するための具体的な行動計画を策定し、ぜひ自社で実践してほしい。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。