※本稿は、藤井貴彦『伝える準備』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
本番中にノートに書き留めておくこと
夕方のニュース番組が終わると、私のデスクに後輩たちが集まってくれます。
そこに神社があったからとりあえずお参りする、という感覚に近いのでしょうか。
もちろん、私にお参りしてもご利益はありません。
ただ、その表情がきらきらしていたり、自分の放送に納得できず悔しそうだったり。
せっかく集まってくれるので、こういう時こそ何か言葉を贈ってあげたいですよね。
もちろん、下手なことは言えませんので、普段から後輩の仕事をしっかり観察して準備しておきます。
具体的に私が準備しているのは「もし聞いてきたら、こんなことを言ってあげたい」というリストです。
そのリストは、本番中のわずかな合間に手元のノートに書き留めていくのですが、最近は私がそのノートを取り出す動きを後輩が目ざとく見ていて、とってもやりにくい(笑)。
なお、そのリストは後輩が聞いてこなければ、記録として残すだけです。
その場しのぎの言葉では相手に届かない
さて、どんなことを書いておくかというと、
例えば、「ニュースの読みが単調になってしまう原因とその解消法」などですが、それを伝えたところで後輩がすぐに弱点を克服できるわけではありません。
このノートの役割は、どちらかというと、以前のアドバイスとどれだけ重なっているか、同じことを言われてモチベーションを失わないか、を確認することにあります。
ですから「アドバイスしすぎないように」注意するという意味で活用しています。
もともと私は、言葉の瞬発力だけはありました。
しかし、その言葉を選びきる慎重さに欠けていたと思います。
手元の一番近いところにあるまあまあの言葉をさっと掴んで、後輩に手渡す。
こちらとしてはできるだけ早く、タイムリーに、と思って発した言葉なのですが、そんな時はだいたい、後輩の表情が曇っていました。
みなさんも、その時の感情で言葉を発して後悔した経験はありませんか。
例えば「あの仕事どうでしたか?」と不意にアドバイスを求められた場合、「よかったよ」という言葉だけでは足りないことは、自分でもわかります。
だからこそ、内心焦りながら多くの言葉を追加していくのですが、その言葉の多くが「練られていない」ものであることが相手に伝わると、途端にアドバイスの効果は薄れます。
後輩は、自分自身へのアドバイスを求め、成長しようとしているのですから、普段の何倍も集中して話を聞いています。
また、自分を理解した上でのアドバイスかどうか「品定め」すらしています。
だからこそ、真剣勝負には、相手を上回る準備が必要だと考えています。
なお、アドバイスの準備ができていない時、私は、「今度しっかり見直しておくから時間をくれないか」と言ってしまいます。
その場しのぎの言葉が届かない「冷や汗」を何度もかいてきたからです。
結局、よりたくさんの時間を使って言葉を練り、アドバイスすることになるのですが、それならば、普段から準備をしておきたいと考えるようになったのです。