「学歴は社会の役に立たない」は本当?

「学歴なんか、社会では何の役にも立たない」

階段に座る元気のないビジネスマン
写真=iStock.com/tuaindeed
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そんな言葉を耳にすることもあると思いますが、そう論じる本人自身はたいてい高学歴だったりします。高学歴ならば成功者になれるわけではないですし、成功者が皆高学歴であるというわけではありませんが、こと大部分の人にとって、学歴と生涯稼ぐ所得というのは、統計上は強い正の相関があります。要するに、高学歴ほど人生の稼ぎは大きいわけです。学歴別に生涯賃金を比較すると、それは明らかです。

厚労省の賃金構造基本統計調査の「退職金を含めない学歴別生涯賃金比較」によれば、大企業に就職した大卒男性の生涯賃金は約3億1000万円。対して、大企業に入った高卒は2億6000万円で、同じ規模の会社に入っても、大卒と高卒とでは生涯賃金に5000万円の差がつきます。さらに、小さい企業に入った高卒の場合は、生涯賃金は1億8000万円に下がるので、大卒大企業就職組と比較すると、ほぼ倍近い1億3000万円もの差が開いてしまいます。女性においても、この傾向は一緒です。

こうみると、将来の所得を考えるならば、勉強が嫌いと言っている場合ではなく、なんとか大学へ進学すべく努力したほうがいい、と言ってしまいそうですが、問題は本人の努力以前にあります。

そんな残酷な現実のお話をします。

私大の授業料はどんどん高くなっている

文部科学省の学校基本調査(確定値)によれば、2020年度の4年制大学進学率は54.1%に達し、(短大も入れると58.5%)過去最高を記録しました。が、その一方で、進学した学生の親の負担が増え続けています。国立大学の授業料はともかく、私立大学の授業料の上昇率は、大卒の子を持つ親世代(45~54歳)の父親の平均給料の伸びよりはるかに高いものになっています。

つまり、親の給料はこの30年間全然上がっていないのに、大学の授業料だけは右肩上がりに高くなっているということです。グラフの数字は私立大学全体の平均値であって、理系、特に医学部など高額な授業料が6年かかる学部の場合はさらに負担が重くなります。

大学授業料と親の年収推移

親の負担は授業料だけにとどまりません。地方から東京など都市部への進学をする場合には、家賃や生活費の仕送りなども考慮しないといけません。仮に、月10万円の仕送りをしたとしても、年間120万円の出費で、これは私立大学平均授業料すら超えます。

都道府県別の大学進学率とその年齢の子を持つ40~50代が世帯主の世帯所得中央値(2017年就業構造基本調査)をみると、0.7という強い正の相関もあります。親の所得が子の大学進学率に直結している何よりの証拠です。