200兆円規模の経済対策法案が成立
3月11日、米国のバイデン大統領は、上下両院で可決された1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナウイルス対策法案(別名、アメリカン・レスキュー・プラン)に署名した。バイデン大統領としては、大型の経済対策の成立によって世論に成果を示したいということもあったのだろう。
1.9兆ドルの経済対策に関して、経済の専門家の間では賛否両論を含めさまざまな意見がある。特に、経済対策によるインフレ(物価上昇)が一時的か否かは重要だ。米財務省やFRB(連邦準備理事会)の関係者は、今回の経済対策が物価の上昇に与える影響は一時的なものにとどまると考えている。
しかし、インフレ楽観論に対して、今後、相応のペースで物価が上昇し続ける展開は排除できない。どの程度の期間で見るかにもよるが、中長期的な米国経済の展開を考えるとインフレ進行のリスクはある。物価上昇が鮮明となればFRBは金融政策の正常化に動き、世界経済には無視できない影響があるだろう。
バイデン政権が重視する雇用・所得の改善
バイデン政権は、コロナショックによって傷ついた米国経済の立て直しのために財政支出を重視している。2月にオンラインで開催された主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議などの場で、元FRB議長であるジャネット・イエレン財務長官は、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的な苦境の克服に向けて「大胆な財政出動を実施すべき」と主張している。
イエレン氏をはじめバイデン政権が重視するのは、財政面から雇用・所得環境の回復を支えることだ。新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年の米国経済は第2次世界大戦後で最悪の状態に陥り、雇用環境の悪化は深刻だ。昨年4月第2週頃を底に米国経済は緩やかに持ち直しているが、2021年2月の失業率は6.2%と、コロナショック発生前の水準を上回っている。
非労働力人口は高止まりしており、家計、個人レベルで日々の生活に苦しむ人が増えたことは見逃せない。2020年10~12月期の金額ベースでみた米国の実質GDP(国内総生産)は、コロナショック前のピークの約98%にまで回復しているが、雇用回復のペースは緩慢だ。経済格差の拡大などの課題もある。