国内で女性2人目となる責任者に抜擢
長年住み慣れた大阪を離れて、東京へ。八王子で開設するFCでは、オペレーションの構築からプロセスの設計までともに働くメンバーと作りあげていく醍醐味を味わった。
「大阪弁はきつく感じるので、現場ではなるべく出さないようにしていましたが(笑)」
2019年には八王子FC全体の運営を担う「サイトリード(拠点責任者)」に着任。日本国内では女性2人目となる抜擢だったが、女性ゆえのプレッシャーはなかったという。
「物流の現場には男性の方が多くても、女性だから……と感じることはまったくないです。新しいFCが立ち上がる度に新しいポジションが空いて、昇進の機会も多いので、男女にかかわらず活躍できる場がありますね」
FCは24時間稼働するので、早番と遅番、夜勤の三交代制だ。それでも残業が少なく、有休も取りやすいシフトが組まれているので、子育てと両立する人たちは多い。かつて残業の多い職場から転職した佐藤さんも、先輩からタイムマネジメントの方法を教えられ、体力的につらいと感じることもなかったという。
新たなコミュニケーションを模索する日々に心がけていること
気がつけばAmazonで10年を過ぎた頃、思いがけず直面した試練がコロナ禍だった。昨年10月に開設した坂戸FCでは冒頭のように感染対策に追われたが、佐藤さんにとってはまた新たなチャレンジの場になった。
坂戸FCには最新の「Amazon Robotics」が導入されている。Amazon Robiticsとは倉庫内を自動走行し、商品棚を動かすロボットだ。入荷した商品を棚に入れると、「ドライブ」と呼ぶ小型ロボットがその棚を持ち上げて、出荷エリアへ運んでくれる。スタッフは商品を棚まで取りに行く手間が省け、作業効率をアップするというシステムである。
佐藤さんはこのシステムが導入されるFCでも初の女性サイトリードとなった。その現場で働くスタッフも新たな顔ぶれだけに、コミュニケーションも課題だった。コロナ禍では会議がすべてオンラインとなり、意思の疎通もなかなか難しい。現場では日々いろいろな問題も生じるので、部下のメンバーとは個々に話し合う時間を集中して取っている。
部下からの相談があれば、まず本人がどう考えているのかを聞き、自分で答を出せるようなコミュニケーションを心がけているという。
「私自身も少しストレッチした業務を会社からアサインされ、周りのメンバーや上司からサポートをしていただいたことでさまざまな知識や経験を積んできました。自分はアマゾンに入って、本当に成長できたと実感しています。部下のメンバーにも、『ここで働いたから今の自分がある』と思ってもらえるような成長のサポートをしていきたいですね」
今も大事にしているのは、かつて自分を励ましてくれた「失敗してもいいんだよ」という上司の言葉。その気持ちがある限り、これからも部下とともに成長していくことだろう。
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。