「近くに来たついでに」は通用しない

対面営業では「たまたま近くを通ったものですから」と言って、お客様のところに顔を出すことがありました。

菊原智明『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)
菊原智明『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)

とくに法人営業では“御用聞き営業”をやっている方は多いと思います。御用聞き営業とは、お客様やクライアントのもとに用事がなくても定期的に訪問し、御用をお聞きして指定された商品を期日までに届ける営業スタイルです。

国民的アニメ「サザエさん」の三河屋のサブちゃんをイメージするとわかりやすいかもしれません。

サブちゃんがサザエさんの家の勝手口から「こんちわ〜、三河屋です!」と声をかけると、フネさんが出てきて「そうそう、お味噌とお醬油をいただこうかしら」となる場面を一度は見たことがあるでしょう。サブちゃんは配達で近くを通るから、ついでに顔を出して注文をもらっているわけです。これこそ「ザ・対面営業」といえます。

実はこのサブちゃんの手法を、私も営業スタッフ時代に使っていました。見込みのお客様に対して「ちょうどこちら方面に来たものですから、寄らせていただきました」と言ってよく訪問したものです。これといって用事があるわけではないので、このように言い訳するしかありません。

当時は上司に「1日に最低でも10件、有効面談数(実際にお客様と会って話した数)を確保するように」と指示されていたので、そうやって数字を稼ごうとしたのです。しかし、アポなし訪問のため、ほとんどのお客様からドアホンでシャットアウトされるか居留守を使われました。

ただ、たまにですが、「ちょっと話が進みそうなの」というふうにお客様と偶然タイミングが合い、チャンスを得られることもありました。対面営業ではアポがなくてもこうしたことが起こったのです。

対面営業では「たまたま近くを通ったものですから」と言い訳しながらお客様と接点を持つことができましたが、リモート営業ではそれができなくなります。

他の手法を考えるしかありません。

「じゃあ、電話で様子をうかがおう」と考える方もいますが、そうすると難易度が上がります。何も用事がないのに、「ちょっと声が聞きたくなりまして……」とお客様に電話したらどうでしょうか? 一度は電話に出てくれるかもしれませんが、次からは間違いなく電話に出てくれなくなります。

お役立ち情報を送ってお客様と接点を持つ

では、どうやったらリモート営業でお客様と接点を持てるのでしょうか?

私のオススメはこうです。

前述した営業レターを使って、お客様にお役立ち情報を定期的に送ってください。お客様とは常に接点を持っておかないと、すっかり存在を忘れられてしまいます。そのうえでお客様の知りたい情報が出たとき、しかもそれを直接口頭で伝えたほうがいい場合に限り、アポイントを取るようにします。

たとえば、「お客様が希望しているエリアの物件が出てきました」というようにメールを送れば、お客様に無視されることはありません。当然、お客様のほうから連絡が来ることがあります。

リモート営業ではお役立ち情報を送りながら、お客様の知りたい情報が出たときのみ、アポイントを取るようにしましょう。

菊原 智明(きくはら・ともあき)
営業コンサルタント

営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。1972年生まれ。群馬県高崎市出身。群馬大学工学部卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。自分に合う営業方法が見つからず7年間、ダメ営業時代を過ごした後、手紙で情報を提供する営業に切り替えたことをきっかけに4年連続トップ営業に。2006年に独立し現職。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)、『使ったその日から売上げが右肩上がり!営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)などがる。