※本稿は、菊原智明『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)の一部を抜粋したものです。
リモート営業は、手紙やハガキでアポイントを取る
対面営業ではお客様に電話して面談のアポイントを取る、いわゆる「テレアポ」が多かったものです。
私も営業スタッフ時代にテレアポを1日中やらされたことがありますが、ほぼアポが取れず疲れだけが残るといった感じでした。非常に効率が悪く、これが一番キツイ営業活動だったと思います。
当時はさんざんテレアポをやっていましたが、私にはトークのセンスがなく、性に合わなかったので、結局最後まで上達しませんでした。しかしそれが幸いし、「文章で伝える」という営業レターのノウハウにたどり着いたのです。
近年はテレアポよりも効率がいいということで、メールが主流になってきています。リモート営業でもメールは新規客へアプローチするのに欠かせない手段ですが、ここではあえて手紙やハガキを利用することをオススメします。
なぜ、あえて手紙やハガキなのか
そう聞いて、「今さら手紙やハガキ」と思った方もいるでしょう。
手書きやアナログツールは地味なイメージがありますが、実は確実にお客様に届き、好印象を与えられる強力なツールなのです。間違いなくリモート営業時代に強力な武器になります。
何もデジタルツールを否定しているわけではありません。SNS、メルマガ、メールなどでお客様とどんどんやり取りをしてもらって結構です。
ただ問題なのは、デジタルツールが飽和しているということです。飽和しているということは当然その中に埋もれますから、新規客へのアプローチはむずかしくなります。
ですから、あえて手紙やハガキを送って差別化を図るといいのです。
ブルーオーシャンで勝負する
今日もあなたのところにいろいろな情報が届いているでしょう。売り込みメールはもちろんのこと、SNSの広告など、少なくても100〜300通は届いているのではないでしょうか?
まさに“レッドオーシャン”です。
「レッドオーシャンでも技術を磨いて勝負する」といった方法もあります。しかし、これほどまでライバルがひしめく中を勝ち抜き、お客様から選んでもらうのは至難の業です。
今はアナログツールを使う人が珍しいと思いますが、私の営業スタッフ時代も、見込み客に手紙やハガキを送る人は10人に1人程度しかいないような“ブルーオーシャン”だったのです。
結果を出している人はライバルの少ない“ブルーオーシャン”に目をつけます。
今、あなたの家にお礼の手紙やハガキがどれほど届くでしょうか? 「そういえばしばらく見ていない」といった感じだと思います。ということは、ブルーオーシャンで勝負すれば、おのずと勝率は高くなります。
たとえば、数人の営業スタッフと会った際、「お礼状」を送ってきた営業スタッフと「お礼メール」を送ってきた営業スタッフのどちらが印象に残るでしょうか? ほとんどのお客様は、お礼状を送ってきた営業スタッフのほうが強く印象に残るものです。
実際の手紙やハガキの送り方・書き方は次項で説明します。
人の3倍アポを取る人のハガキ術
研修先のトップ営業スタッフ、Tさんのケースを紹介します。
Tさんは見込み客に対して定期的に手紙やハガキを送っています。実際にアナログツールで多くのアポイントを取っているのです。Tさんのやり方はこうです。
まず、見込みのお客様の住所を調べて1通の手紙またはハガキを送ります。今はホームページに会社の住所が掲載されていますから、検索すればすぐに出てきます。Tさんはその手紙やハガキに「絶対に損はさせません」と書いて、面談してもらうための自分の強い思いを伝えています。
そして後日、面談のアポイントを取るために電話をかけます。
【「アプローチハガキ」の実例】
高崎北部エリアを担当しているABC株式会社の菊原智明と申します。
貴社のランニングコストを軽減するご提案があります。
後日、下記の電話番号からお電話させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
全力でお手伝いさせていただきます
※ここに自筆で思いを書く
〒000-0000 群馬県高崎市○○町
TEL 000-0000-0000
ABC株式会社 高崎営業所 菊原智明
ただ単に「お会いしませんか?」とお客様に電話しても相手にされませんが、手紙やハガキを送っている分、話を聞いてもらえる確率が上がります。こうして人より3倍も多くアポイントを取っているのです。
一通一通書く時間を省く
この話を聞いて「なかなかできることじゃない」と思った人もいると思います。たしかに一通一通、手紙やハガキを書くのは時間がかかります。
そこですべて手書きではなく、「私はこういったお手伝いができます。後日お電話させていただきますのでよろしくお願いします」というような決まった文章は、パソコンで文字を打って印刷するのです。
そこへ一言、たとえば「ぜひZoomでお会いさせてください」と手書きで添えます。これだけで十分なのです。
手紙やハガキを送るタイミングはお客様に合わせていいと思いますが、「ハガキ」→「メール」→「手紙」→「メール」というようにアナログツールとデジタルツールを組み合わせて交互に送るのも効果的です。
デジタルツール全盛の時代だからこそ、アナログツールでアポイントを取る。ぜひお試しください。
「近くに来たついでに」は通用しない
対面営業では「たまたま近くを通ったものですから」と言って、お客様のところに顔を出すことがありました。
とくに法人営業では“御用聞き営業”をやっている方は多いと思います。御用聞き営業とは、お客様やクライアントのもとに用事がなくても定期的に訪問し、御用をお聞きして指定された商品を期日までに届ける営業スタイルです。
国民的アニメ「サザエさん」の三河屋のサブちゃんをイメージするとわかりやすいかもしれません。
サブちゃんがサザエさんの家の勝手口から「こんちわ〜、三河屋です!」と声をかけると、フネさんが出てきて「そうそう、お味噌とお醬油をいただこうかしら」となる場面を一度は見たことがあるでしょう。サブちゃんは配達で近くを通るから、ついでに顔を出して注文をもらっているわけです。これこそ「ザ・対面営業」といえます。
実はこのサブちゃんの手法を、私も営業スタッフ時代に使っていました。見込みのお客様に対して「ちょうどこちら方面に来たものですから、寄らせていただきました」と言ってよく訪問したものです。これといって用事があるわけではないので、このように言い訳するしかありません。
当時は上司に「1日に最低でも10件、有効面談数(実際にお客様と会って話した数)を確保するように」と指示されていたので、そうやって数字を稼ごうとしたのです。しかし、アポなし訪問のため、ほとんどのお客様からドアホンでシャットアウトされるか居留守を使われました。
ただ、たまにですが、「ちょっと話が進みそうなの」というふうにお客様と偶然タイミングが合い、チャンスを得られることもありました。対面営業ではアポがなくてもこうしたことが起こったのです。
対面営業では「たまたま近くを通ったものですから」と言い訳しながらお客様と接点を持つことができましたが、リモート営業ではそれができなくなります。
他の手法を考えるしかありません。
「じゃあ、電話で様子をうかがおう」と考える方もいますが、そうすると難易度が上がります。何も用事がないのに、「ちょっと声が聞きたくなりまして……」とお客様に電話したらどうでしょうか? 一度は電話に出てくれるかもしれませんが、次からは間違いなく電話に出てくれなくなります。
お役立ち情報を送ってお客様と接点を持つ
では、どうやったらリモート営業でお客様と接点を持てるのでしょうか?
私のオススメはこうです。
前述した営業レターを使って、お客様にお役立ち情報を定期的に送ってください。お客様とは常に接点を持っておかないと、すっかり存在を忘れられてしまいます。そのうえでお客様の知りたい情報が出たとき、しかもそれを直接口頭で伝えたほうがいい場合に限り、アポイントを取るようにします。
たとえば、「お客様が希望しているエリアの物件が出てきました」というようにメールを送れば、お客様に無視されることはありません。当然、お客様のほうから連絡が来ることがあります。
リモート営業ではお役立ち情報を送りながら、お客様の知りたい情報が出たときのみ、アポイントを取るようにしましょう。