そして、これは会議の招集者が個人的にそういった使い分けをするだけでなく、会社としての方針を明確に社内に発表した方がいい。それをしないと、何の説明もなしにやたらと「面着で話をしよう」と言い出す管理職が出てくるからだ。
在宅勤務における会議アプリの選定、使い方については方法論を確立して、社内に知らせることだ。
米国オフィスではモニターと椅子を貸し出し
通信環境、会議アプリの使い方の次は自宅での執務環境の整備である。これについて、参考になる話をしてくれたのが北明の下で働いている泉賢人だ。
泉は情報システム本部に来る直前(2020年6月)までテキサスのトヨタにいた。新型コロナ危機をアメリカで体験し、同地での在宅勤務と現地社員のくふうを経験している。
泉は「アメリカでは3月から在宅勤務に変わりました。オフィス勤務だった全員が在宅です」と教えてくれた。
「アメリカでもとにかく通信環境の整備が生産性向上につながるということになりました。そこで在宅が始まる前、パソコンの大型モニターとオフィスチェアを従業員に貸し出したんです。彼らはピックアップトラックで通勤しているから、そのままうちへ持って帰ることができたんです。貸し出しといっても、置いてあるノートに名前を書くだけ。ほとんどの人が大型モニターとチェアを自宅に持って帰りました。
在宅環境は何よりも椅子が重要
オフィスチェアなんですが、人間工学に基づいたもので、長時間、パソコンで作業しても肩こりにならないものです。私はアメリカ人の同僚にどういう椅子かを訊ねて自分で購入してみました。プロのゲーマーが使うゲーミングチェアっていうんですけれど、それを使うだけでストレスは少なくなるようです」
話を聞くかぎり、通信機器で大切なのはモニター部分、そして、環境でまず変えるべきは椅子ということになる。
調べてみたら、ゲーミングチェアの価格はせいぜい2万円だった。それくらいは会社が負担すべきだろう。
また、泉は「スタンディング勤務も有効です」と言った。いくらいい椅子でも、一日中、腰かけてパソコンに向かうのではなく、2時間くらい、立って働く。
コロナ太り、運動不足を防ぐためのアメリカ人の知恵がスタンディングである。
「スタンディングのための高い机を買わなくてもいいんです。段ボール箱を積み上げて、その上にノートパソコンを広げればいい」(泉)