生物絶滅、有害化学物質、海洋プラごみ……

2019年に「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」が発表した「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」では、これまでに調査した動植物のうち、約100万種がここ数十年のうちに絶滅の危機にあると報告されています。

医薬品、化粧品、食品添加物、農薬、洗剤、防虫剤、消臭・芳香剤、プラスチック添加剤など、実に広範囲に使用されている化学物質は、一つひとつの濃度は微小でも、その蓄積がもたらす人体や生態系への憂慮すべき事態は、静かに、確実に進行しています。

海に浮かぶビニール袋やビン、コップ
写真=iStock.com/Placebo365
※写真はイメージです

ここ数年、日本でも大きな話題となった海洋プラスチックごみ問題も深刻で、今年7月からのレジ袋の有料化へとつながっていきましたが、もちろんレジ袋の使用量を減らすだけで解消するような小さな問題ではありません。レジ袋の有料化はあくまでも国民が問題意識を共有するための第一歩、「きっかけづくり」の事例にすぎないのです。

「21世紀に則した」、しかし「過去50年とは異なる」生活様式

これら広い意味での環境問題はそれぞれ大問題で、その課題や解決方法も多岐にわたりますが、実は私たち人類の生活様式の変化が起点となってもたらされたものという点で共通しています。私たち生活者・消費者の日々の小さな選択や行動が環境問題を深刻化させているのです。

私たちの生活を産業革命以前の様式に戻すことはできません。21世紀の今日に則した、しかし、ここ50年間とは違う新たな生活様式を創り出していくしか道はないのです。その際、私たち一人ひとりがこれらの環境問題を「自分事」として捉え、知恵を絞り、工夫を重ねることが決定的に重要となります。

「霞が関・永田町・大手町」連携方式との決別

これまで、環境政策に限らず日本の重要な政策は、「霞が関」の一部官僚、「永田町」の特定利害国会議員、そして「大手町」あたりの一部大企業、さらには彼らに親和性のある、あるいは官僚からみて都合のよい「有識者」といわれる一部の学者や専門家などの、ごく限られた人脈と知恵だけで決定されてきました。

そこで出される結論はいつも「経済成長」が第一優先で、「経済成長を促進する中で環境問題にも配慮する」ことはあっても、「環境対策を優先する中で経済成長にも配慮する」という順番になることはありませんでした。

環境危機の克服に向けた「社会人・勤労者としての開発・改善努力」「納税者・有権者としての適切な判断」「生活者・消費者としての協力姿勢」。そうしたもののすべてが、環境危機の回避へとつながっていくのです。