ジーパンで「性的主体性」を取り戻した

【上野】どうでもいいことだけど、思い出した! あの頃、女の子たちがはじめてジーパン履いたことで、セックスに変化が起きた。

【田房】へえ!

【上野】ジーパンって今は当たり前のファッションでしょ。あの頃はズボン履いて学校行くと、「今日は何かあるの?」「デモに行くの?」って聞かれたのよ。女はスカートを履くのが当たり前で、ジーパン履いてきた女の子を教室に入れなかった教授がいたぐらい。

【田房】えっ!? なんで……!?

上野千鶴子・田房永子『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』(大和書房)
上野千鶴子・田房永子『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』(大和書房)

【上野】神戸女学院のアメリカ人男性教授が、大阪大学で非常勤で教えた時の話。これには抗議の声が上がったけどね。

【田房】しかもアメリカ人なんですね。

【上野】ジーンズ発祥の国なのにね。でも神戸女学院はレディを育てる学校だもの。レディはジーパンなんか履いちゃいけないのよ(笑)。

【田房】へー……。

【上野】「へー」だよね(笑)。当時ジーパンって言えばローライズで、ぶっといベルトしてたの。そしたらさ、女の子がおもしろいこと言うのよ。「ジーパン履くようになってから、性的主体性ができたわ」って(笑)。

【田房】どういうことですか? ジーパンにそんな機能があった?

【上野】ないよ、ないない(笑)! なぜかって言うと、スカートだと手を突っ込まれて、いつのまにかなし崩しにセックスに持ち込まれるけど、ジーパンの場合、男が脱がせられないから、女が手伝ってやらないとできない。「ベルトはずそうとしてる間にふっと手が止まるようになった」っていうわけ。「ちゃんと選ぶようになった」って(笑)。それを「性的主体性」って呼んだのよ。

【田房】女側が相手の男を選ぶ猶予の時間ができたってこと? それまでなんだったんですか(笑)!

【上野】なし崩しよ。その場の雰囲気に流されてなんとなくっていうね。雑魚寝したりするから。それを「性的主体性ができたわ」って表現する子が出てきて、超おかしかった! それまでみんなスカートしか履いてなかったんだから。スカートってやっぱりすごく無防備だよね。そうそう、パンストが登場した時に、「パンストは昭和の貞操帯」(※9)って呼ばれてたの、知ってる?

【田房】え? え?

【上野】なんか今日は私、歴史の生き証人みたい(笑)。

【田房】パンスト履いてるとすぐに脱がせられないから?

【上野】女が自分から脱がないと、脱がせるのが難しいから。日本では、パンストは確かミニスカと同時に、68年に登場したはず。パンストなしにミニスカは普及しなかったと思う。

【田房】今だとパンストって別の性的なイメージがあるかも。AVなんかでは「破るもの」みたいな、そういうジャンルもあるし。

【上野】破るのは、パンストがうんと安くなったから。

【田房】そっか!

【上野】当時は破いたらもったいなかったもんね。テクノロジーの進化も関係あるのね(笑)。

※9 【貞操帯】19世紀に使われた女性の貞操を守るための器具。鉄製で鍵がついていた。

上野 千鶴子(うえの・ちづこ)
社会学者

1948年富山県生まれ。京都大学大学院修了、社会学博士。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門学校、短大、大学、大学院、社会人教育などの高等教育機関で40年間、教育と研究に従事。女性学・ジェンダー研究のパイオニア。

田房 永子(たぶさ・えいこ)
漫画家、ライター

1978年東京生まれ。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』がベストセラーに。主な著書に『ママだって、人間』、『キレる私をやめたい~夫をグーで殴る妻をやめるまで~』、『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』など。