目元のメイクに人気が集中

「マスクをしていると目元しか表に出ないので、とくに眉毛と目元を印象的に見せるメイクアップ術に、人気が集まるようです」と話すのは、同コミュニケーション戦略部・勝田彩さん。

メイクレッスンのワークショップの様子。
メイクレッスンのワークショップの様子。(写真提供=ポーラ)

同社は従来、店舗ごとに、地域コミュニティ(ママ友の会ほか)や学校、企業など法人を対象にしたレッスンを、リアルで企画・実施してきた経緯があります。オンラインでのワークショップは、それをWebへと移行させたイメージです。

とはいえ、オンラインの場合、参加人数が多くなりすぎると「ウェビナー」のように一方的な情報提供になってしまったり、一体感を得にくくなってしまったりする。そこで、参加者が3~8人程度の小規模の回も開催し、「〇〇さん、どうですか? 少し難しいですか?」など、積極的に声掛けして感想を聞くことで、参加した顧客同士も楽しみながら親睦を深められるよう、配慮しているとのこと。

こうした工夫もあり、顧客からは「楽しかったので、別の機会にお友達を呼んでもいいですか?」といった声も寄せられるそうです。

対面できない飢餓感は新しい消費につながるのか

半面、オンラインでのカウンセリングやワークショップでは、どうしても顧客の「肌」に触ることができないうえ、直接対面で雑談などをすることが難しい。

そのため、経験したビューティーディレクターは、「オンラインで30分話をすると、余計にお客さまに会いたくなる」「目の前でお肌を見て差し上げたい、という気持ちが強くなる」など、ジレンマを感じているようだと勝田さん。

ですが、こうしたジレンマは、決してマイナスばかりではないでしょう。

例えば、兵庫県・有馬温泉の旅館の事例。コロナ禍で春から夏にかけて、県またぎの旅行を自粛した人も多いなか、旅館の若手経営者らは4月、いち早く「自宅にいながら」温泉を疑似体験できる、「VR(仮想現実)映像」を制作し、ユーチューブでの公開を始めました。

すると、たちまち動画が評判を呼び、5月中旬までに、再生回数が約1万回に到達。私の知人(女性)も、この動画を見たうえで9月、有馬温泉に行ったと話していました。

「有馬(温泉)の泉質が大好きで、2年に一度は行っていた。それが急に行けなくなったので、動画を見て「早く行きたい、行きつけの旅館の女将さんに会いたい」と、ジレンマが膨らんでいった」とのこと。

だからこそ、その女性も、いざ会える状態になって「すぐに行こう」と、いてもたってもいられなかったのでしょう。旅館で馴染みのお客さまを迎える側も、おそらく同じ。

マーケティングで言われる「ロミオとジュリエット効果」のように、「会いたいのに会えない」状況に置かれるからこそ、顧客も、それを迎えるスタッフも、普段の何倍も気持ちが盛り上がり、モチベーションが高まる効果もあるのです。