なぜポーラはいち早くオンラインカウンセリングを始められたか
今年は新型コロナによって、顧客と企業を巡る多くの「外部環境」が大きく変化を遂げました。ですが、ポーラがそこでいち早くオンラインカウンセリングを行えたのは、自社を取り巻く環境変化を冷静に捉え、「SWOT分析」、すなわち「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」を分析できたからではないでしょうか。
化粧品メーカーにおける、コロナ禍のSWOT分析の一例が、【図表1】の通り。とくにポーラにとって大きいのが、全国のポーラショップにいる、約4万1000人ものビューティーディレクター。これは取りも直さず、同社の大きな「強み(S)」になりますよね。
従来、化粧品メーカーは、顧客の肌に直接触れる、肌カウンセリングに力を入れてきました。ですが、こうしたオンラインとリアルの二軸で対応できる体制を整えれば、双方の「いいとこ取り」も可能。遠隔地の新たな顧客も、取り込める可能性があります。
また、メルマガや来店時、オンラインワークショップ時など、顧客一人ひとりのタッチポイントごとに「カスタマージャーニーマップ」を作れば、どこで彼らが満足度を高め、逆にガッカリしたかなども可視化できます。
何が顧客満足につながっているかを追究する
そうすることで、今後の顧客満足につながる実践例が、データとして山ほど蓄積できる。ここが、接客も含めてオンライン(データ)化する、一つの大きなメリットです。
他メーカーも負けてはいません。資生堂は9月、総合美容サイト「ワタシプラス」において、顧客一人ひとりに合わせたメイクテクニックを提案する、スマートフォン向けサービス「ワタシメイク分析」を導入。花王も10月、傘下のカネボウ化粧品のブランドで、LINEを活用したオンラインでのパーソナルサービスを始めました。
オンラインが通例化すれば、他方の「リアルならでは」の付加価値も増すはず。また今後、消費者や社会がより一層、「オンラインが当たり前」となれば、若年層を中心に「なぜコスメだけ、店に行かないとダメなの?」と不便さを感じる人たちも増えてくるでしょう。もはや化粧品メーカーにとっても、サービスのオンライン化は、避けては通れぬ「ニューノーマル」と言えそうです。
立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。