管理職になるための明るい社内政治入門
リーダーの役割を担うには、実務だけでは不十分。チームを成功に導くために身につけておきたい管理職の基本的ヒューマンスキルを学ぼう。
【1】敵をつくらない社内調整力
例えば会社の主力製品の売り上げが落ちている場合、付加価値の高い新製品を投入するというプランに大筋で反対する人はいない。しかし、現場ではどうだろう。営業や製造部門、経理などの管理部門で、立場の違いから意見が対立するかもしれない。そんなとき、うまく仕事を進めるために必要なのが「社内調整」だ。
言うまでもなく会社の仕事は、経営目標を限られた期間と予算、人を使って達成することで成果が出る。そのプロセスを管理するのが、リーダーをはじめとする各部門の管理職の仕事だ。それぞれの部門管理者は経営目標のためにおのおの行動しているが、総論で一致する利害も、細部では対立することがある。結果を出すリーダーには、関係各所の対立を解消し、万難を排して仕事を先に進める調整力が求められる。
では具体的にどうしたら「調整」が可能なのだろうか。組織での対立は悪者がいるわけではなく、それぞれが使命感をもって仕事をしていく中で生まれてしまうもの。自然発生的な問題だけに、解決するには「利害関係者の意見・反論・要望を事前に把握して分析し、調整して関係者が合意できるように行動する」(「3ステップ」参照)ことに尽きる。それぞれの立場の違いから利害は異なるものなので、関係者から地道に情報を引き出し(「秘訣6」参照)外堀を埋めていくほかない。
社内調整というと非合理で面倒なものだと敬遠するかもしれないが、管理職にとっては生命線ともいえる大事なスキルだ。事前の調整が甘いことで、会議などの公的な場で企画を反対されたり、ましてや廃案になるリスクがあったりすることを考えれば、実に合理的な方法といえる。さらに、対立相手と共犯関係で組織同士の合意シナリオを練り、仕事を成立に導く「調整上手」の評判が立てば、他部署でも重宝され、社内で影響力や評価が高まるメリットも。