政府が婚姻届と離婚届の押印の廃止を検討している。離婚問題に詳しい弁護士の理崎智英氏は、「押印廃止でオンライン化が進めば、本人確認が厳格化されるだろう。そうすれば、手続きが簡単で便利になるだけでなく、婚姻届や離婚届を勝手に届け出されるというリスクも減る」と指摘する――。
電子証明書の提出が検討されている
菅内閣の発足後、河野太郎行政改革担当大臣が陣頭指揮をとって、主に迅速性の観点から、行政手続の押印制度を廃止する動きが活発になっていることは皆さんもご存じかと思います。
この度、法務省は、婚姻届と離婚届についても押印制度を廃止する方向で検討していることが明らかになりました。なお、署名については、維持する方向のようです。
婚姻届や離婚届の押印が廃止されて手続がオンライン化されると、本人確認が厳格になり、なりすましによる届出は大幅に減ることが期待されます。
報道によると、婚姻届や離婚届の提出にあたっての本人確認のために、押印に代わり電子証明書を提出することが検討されているようです。電子証明書は、マイナンバーカードを保有し、かつ、暗証番号を知らなければ発行されないので、本人が第三者にマイナンバーカードを渡したうえで、暗証番号まで教えなければ、なりすましによる提出は防げます。
もっとも、総務省によると、マイナンバーカードの普及率は全国で約19%(2020年9月1日時点)にとどまっていることから、婚姻届や離婚届の提出をオンライン申請のみにすることは難しいでしょう。
婚姻届や離婚届の押印は廃止するにしても、それに代わる本人確認としてマイナンバーカード以外の方法を用意する必要があるでしょう。本人確認の方法は自治体によって異なるとは思いますが、たとえば、運転免許証やパスポート、健康保険証の提示を求めることなどが考えられます。これらの方法は完璧ではありませんが、押印だけで済むのに比べれば、大きな前進といえます。