女性が管理職になりたがらないと嘆く企業は人材育成が下手

【白河】以前、あるメディアで「『女性を管理職にしたくても本人がなりたがらない』と言う企業は人材育成が下手なんです」とおっしゃっていましたね。心に響きました。女性の可能性という点で、今のお話とも一貫していますね。

【及川】私は、何も女性を特別に扱ってほしいわけではなく、平等に機会をくださいと言いたいだけなんです。企業は、女性が管理職になりたがらなかったら、それはなぜなのか、何を改善すべきなのか考えなくてはいけません。

アメリカのギンズバーグ判事の言葉に、「人間には誰しも自分で選び自分で決める権利がある。それがジェンダーで阻害されるとしたら悲しいことだ」という意味合いのものがあります。

仕事の機会もそうですし、家庭のエリアでも「ワンオペ」の問題など、女性の活躍を阻害する要素が残っています。それらの改善も含めて、皆が平等にチャンスをつかめる社会を目指したいと思っています。

下駄を履かせなくても女性は優秀

【白河】確かに、女性管理職が増えないことを本人のせいにしているようでは、上を目指す女性はなかなか増えないでしょうね。また、会社が女性に機会を与えようとすると「女性だからって下駄を履かせて」と言う男性社員もいると聞きます。

【及川】下駄なんか履かせなくても女性は優秀ですよ、と声を大にして言いたいですね(笑)。女性は男性に比べて能力を卑下する傾向があったり、出産後に一時的に心身が弱くなったりしがちですが、だからリーダーになる機会を与えないというのは不合理です。自信がなければ後押しをする、仕事と家庭の両立が大変な時は支える、そうしたことが当たり前の社会にしていきたいですね。

【白河】日本の働く女性たちの可能性を広げていくんだという覚悟が伝わってきて、私も非常に心強く思いました。どうもありがとうございました。

構成=辻村洋子

白河 桃子(しらかわ・とうこ)
相模女子大学大学院特任教授、女性活躍ジャーナリスト

1961年生まれ。「働き方改革実現会議」など政府の政策策定に参画。婚活、妊活の提唱者。著書に『働かないおじさんが御社をダメにする』(PHP研究所)など多数。

及川 美紀(おいかわ・みき)
ポーラ 代表取締役社長

1991年、東京女子大学卒業後、ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。まもなく販売会社に出向し、埼玉エリアマネージャー、商品企画部長を歴任後、2012年に執行役員、14年に取締役就任。20年より現職。