この火葬プランは、経済的な負担を究極まで軽くすることで、真の意味で遺族に寄り添うというスタンスである。祭壇や献花の押し売りもない。それは、近藤氏の死生観に由来しているそうだ。

「僕はもともと地場の葬儀社に勤めていたんですが、実は死後の世界も、輪廻転生も信じていないんです。死んだら無になるのに、なんでこんなに葬儀はお金がかかって、無駄な祭壇を飾らなければならないんだろうと思っていたんです。供養や成仏など、ただ、業界の人間が儲かるだけで何の意味もない。祭壇がないとなぜいけないのか、お坊さんはなぜいなくてはいけないのか。いらないんじゃないかと。それで激安の直葬プランを作ったんです。最初は他の葬儀社からなんてことをするんだと、叩かれましたね。価格破壊だとめちゃくちゃに言われました」

棺を車に積み込むセレモニースタッフ
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「アマゾンの棺さえ買えば完結する」は誤解

近藤氏によると、実際素人が直葬を行おうとした場合、アマゾンで棺を買うだけで全てが完結するというわけではなく、さまざまな問題が立ち上がってくるという。

まずは、病院で亡くなった場合、自宅や安置所まで遺体の搬送をどうするのかという難問がある。

「病院で亡くなったら、葬儀社や火葬場の安置所に病院から運び出さなければいけません。まずそこで、どうやって遺体を運ぶの? となりますよね。ストレッチャーがない場合、おんぶとか、背負うしかありませんが、遺体からは排せつ物や、色んな液体が出てくる恐れがあります。かつて、お客さんが、亡くなったおばあちゃんを介護施設から抱っこして車で運んだ例がありましたが、体重が30キロくらいだったので、それは例外だと思います」

加えて、今日亡くなったとしても、翌日にすぐ火葬というわけにはいかない。亡くなってから24時間は火葬できないという法律があるためだ。

通常葬儀業者は、故人が亡くなると、役所まで足を運び火葬許可証を取り、さらに火葬場の予約を取る。近藤氏によると、早朝亡くなった場合、最短で翌日に火葬できるケースもあるという。特急で火葬許可証を取って、火葬場を予約して火葬炉が空いていた場合だ。

しかし、直葬なら平均で亡くなった翌々日に火葬というケースが多く、それまで遺体をどこかに安置する必要がある。葬儀社の安置施設に預けると、通常はその分、費用が発生する。

近藤氏の話では、自宅に安置することが安い場合もあるという。

「家で遺体を安置する人は減っていますが、自分の家に遺体を安置するのは、15年前は普通ですから、当たり前にできるんですよ。あと、季節によって遺体を冷やしているドライアイスを追加するタイミングなどは、経験と知識が必要だと思いますね」