渋澤さんは父母の遠距離介護を経て、父の死後、母を呼び寄せて同居を開始。その後、母の介護度は3から5へ上がっていったという。
「生活費と医療費を除くと、遠距離の頃は2人分の介護サービス費と配食サービス、月3回の帰省交通費などで月6万円ほどかかっていました。同居後は定額制サービスや自治体の支援サービスなどを活用し、要介護3で月2万5000円、要介護5で4万5000円前後でした」
定額制サービスとは、要介護度別に決められた額を毎月事業所に払っていくもの。渋澤さんが利用したのは、ひとつの事業所で訪問・通い・宿泊を組み合わせて利用できる「小規模多機能型居宅介護」。介護保険の支給対象で、月の負担額は介護度に応じて4000~3万円ほどだ。
「窓口がひとつなので急な連絡や調整も楽。私が仕事を続けられたのはこのサービスのおかげ」と渋澤さん。仕事と介護の両立を考えるならぜひ選択肢に入れておきたい。
また、自治体の支援サービスとは、オムツの支給や訪問支援など、各自治体が独自に行っている介護保険外のサービスのこと。内容は地域によって異なるので、親が住む市区町村のサイトなどで調べておこう。
在宅介護ではリフォーム費用も気になるところだ。手すりをつける、畳をフローリングにするなどの改修なら介護保険の対象。支給限度額とは別に、1人につき20万円までが支給される。加えて、1回目の改修後に要介護度が3段階以上上がったとき、転居したときは再度20万円まで支給される(1~3割は自己負担)。
施設介護の費用には大きな差が。入居一時金も要チェック
施設介護の費用は、一般的に在宅介護より高額になる。入浴や排せつ、食事の介助などを含めた「施設介護サービス費」には介護保険が適用されるため、この部分の支払額は総額の1~3割で済むが、家賃などの居住費、食費、日用品費、娯楽費といった生活費は全額が自己負担だ。
図は、施設介護サービス費の自己負担分と生活費を合わせた、各施設の費用の目安。公的施設は月8万~20万円前後だが、民間施設では月10万~30万円以上にもなる。
「人気が高いのは利用料が手頃な特別養護老人ホームですが、経済面や家庭環境に問題のある人が優先されるため、必要な時期に入居できる確率は低くなります。それなら民間施設にと思っても、こちらは月額や入居一時金が高め。どこに入りたいかより『どこなら入れるか』を重視せざるをえない現状があります」