要介護3以上になると、ひとりでは日常生活や外出がスムーズにできなくなり、別居での在宅介護は難しくなってくる。利用する介護サービスも増えるため、別居よりは施設のほうが逆に割安になることも。渋澤さんは「介護保険を支給限度額近くまで使うようになったら施設を検討してみて」とアドバイスする。
施設介護には、常に見守る人がいる、家族の負担が減る、他の入居者と交流できるなど多くのメリットがある。一方で、人によっては集団生活がストレスになったり、家族と離れて疎外感を覚えたりすることも。施設介護は本人の性格や考え方も重要になってくるため、元気なうちに希望を聞いておくといいだろう。
「施設は必ず前もって見学を。生活環境や職員の様子のほか、自分が通いやすい距離かどうかも確認しましょう。環境や費用は施設ごとに大きく違います。希望の施設に入居できるとは限りませんが、いくつか見学しておけば親と自分にとってのベストが見えてくると思います」
費用面だけ考えれば、いちばん安く済むのは同居介護。しかし、自宅が狭い、仕事と両立できない、親が地元を離れたがらないなど家庭の状況は人それぞれだ。先々まで別居が続くようなら、早めに施設をあたっておくのがおすすめだ。その際は、図の金額に医療費が加わってくることも考えて、予算と希望のバランスをとりながら選びたい。
高額になったら払い戻し制度を使って賢く節約
先々を考えると介護費用はできるだけ抑えたいもの。その節約術を渋澤さんに教えてもらった。
「介護保険には、介護サービス利用費が高額になった場合に払い戻しが受けられる『高額介護サービス費支給制度』があります。対象者には申請書が送られてくるので、必ず申請しましょう」
この制度は、1カ月の自己負担合計額が一定の上限額を超えた場合に超過分が払い戻されるもの。上限額には4万4400円、2万4600円、1万5000円の3種類があり、所得などによって決められる。
図は上限額1万5000円の人のケース。渋澤さんも「小規模多機能型居宅介護の費用と福祉用具のレンタル代、計4万円のうち2万5000円が払い戻された」という。
さらに、医療費が高額になったら高額療養費制度、介護費と医療費の合計が高額になったら高額医療・高額介護合算療養費制度が利用でき、申請すれば超過分が払い戻される。
「加えて、前述の自治体の支援サービスの活用や、親と世帯を分ける『世帯分離』も重要なポイントです。同一世帯だと親と自分の所得が合算され、利用者負担割合や高額介護サービス費の上限額が増えてしまいます。ここは意外と見落としがちなので気をつけたいですね」