「介護は親のお金で、が基本」と断言する
介護にかかる費用をざっくり見てきたが、ではこのお金は誰が負担すべきなのか。親のお金は今後の医療費や施設費にとっておいて、今は自分が払っておこうと考える人もいるだろうが、渋澤さんは「介護は親のお金で、が基本」と断言する。
40歳以上の人が毎月払っている介護保険料は、親世代が介護サービスを利用するためのもの。子世代は、それだけでも費用面で十分協力していることになる。まずは親のお金から使い始めて、足りなくなったら補うという考え方が正解のようだ。
そのためにも、親の資産は本人が元気なうちに把握しておくことが大事。いつ頃足りなくなるかめどがつけば、いたずらに不安がることなく先々の心構えができるだろう。
また、介護離職はできる限り「しない」工夫を。仕事との両立には苦労も伴うが、収入が絶たれると将来の自分の生活が苦しくなってしまう。有休や介護休暇・休業では足りない場合でも、まずは働き方を変えるなどの道を探ってみてほしい。
「私は早々に完璧主義を捨てて、介護も仕事も家事も7割できたらいいと割り切りました。そのおかげで、比較的楽に介護と向き合えた気がします。介護には、こうあるべきという正解はありません。皆さんも気持ち・お金・時間の現実と向き合って、自分らしい介護を心がけていただけたらと思います」
在宅介護エキスパート協会 代表
1964年、静岡県生まれ。会社勤務のかたわら、長年にわたって仕事、子育て、介護のトリプルワークを経験。自身の経験を生かして介護相談やセミナー講師、執筆活動など幅広く活躍中。社会福祉士。近著に『親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)。
イラスト=右近 茜
岡山大学法学部卒業。証券システム会社のプログラマーを経てライターにジョブチェンジ。複数の制作会社に計20年勤めたのちフリーランスに。各界のビジネスマンやビジネスウーマン、専門家のインタビュー記事を多数担当。趣味は音楽制作、レコード収集。