母親を疲労させるPTA
日本のお母さんが子どもをベビーシッターさんなどに預けにくいのは「育児に直接かかわること」ですが、子育てが大変な「遠因」にはPTA活動もあります。もちろん「PTAがあるから子どもを産まない」という女性はいないでしょうが、近年メディアでも頻繁に「PTAで理不尽な思いをしているお母さん」の話が報じられています。実際に日本のPTAは父親よりも母親が何かと駆り出される傾向にあります。
PTAといえばベルマーク運動が有名ですが、切り取り作業に参加しているのは「お父さん」ではなく「お母さん」が多いです。時給に換算したらまったく割に合わないこのベルマーク運動がなぜなくならないのかというと、その根底にはやはり前述の「苦労するお母さん」が美化されがちだという日本特有の事情があるのだと思います。つまり「母親なら、時給のことなど言わずにこれぐらい無償で奉仕するのが当たり前」というような発想が根底にあるわけです。
こういったことも含めて「子育てはなんだかんだと、しがらみが多くて大変」というのが現実なのではないでしょうか。
「無痛分娩がいい」と堂々と言うヨーロッパ女性
「お母さん」または「お母さんになる人」に対して理不尽な苦労を求めるという構図は、日本では無痛分娩がなかなか社会的に認められず、実際に無痛分娩が可能な医院が少ないことからも明らかです。ちなみに以前この話をしたら医療関係者から「それは日本では麻酔医がずっと常駐することが難しいから」と、あくまでも制度上の問題だということを指摘されました。しかしあらかじめ痛みが伴うと分かっている出産という場のためになぜ麻酔医が常駐する制度が設けられていないのか、ということを考えた時にやはり「お母さんになるに人には出産の痛みぐらい我慢してもらわないと」という考えが一般化されているからではないのか……と勘繰ってしまいます。
筆者の知人の日本人女性は無痛分娩をすることを自分の中で決めていましたが、いざ妊娠して周囲にそのことを話すと、家族全員から反対されたそうです。これはヨーロッパではあまり見られない傾向で、ドイツを含むヨーロッパでは無痛分娩は当たり前ですし、その理由について女性に聞けば堂々と「痛いのは嫌だから」という答えが返ってきます。出産で痛い思いをするのは女性なのに、女性が「痛いから自然分娩は嫌だ」と言いづらい社会というのは、よく考えたらおかしな話なのです。