夜間に一斉閉庁する「インターバル」の導入を

そこでぜひ、官庁だけでなく民間企業にも広く導入してほしいのが「インターバル」です。これは、残業時間を制限するというアプローチと異なり、その日に仕事を終えてから翌日仕事を始めるまでに、一定の時間を空けるというものです。インターバルは、昨年の労働基準法の改正で「努力義務」になりましたが、実際に導入している企業はまだほんの一部です。EUでは、仕事を終えてから翌日仕事を始めるまでに11時間のインターバルを開けるよう定められています。

これを、省庁で導入すべきだと思います。具体的には、夜10時から朝5時ごろまで、完全に閉庁するのです。ひとまず全員夜10時には帰宅してもらい、緊急の仕事は、今回インフラを整備したテレワークで行う。全員が深夜に緊急の仕事をするわけではありませんから、回線は足りるはずです。

人間の脳は朝起きてから13時間しか集中力が持たないことが証明されています。ミスが発生し、そのカバーをする仕事やクレーム対応に追われる……といった事態を打開していくためにもインターバルが必要なのです。

不正行為やセクハラ・パワハラを防ぐ効果も

さらに、これを行うとパワハラやセクハラ、不正行為の数が大幅に減るはずなんです。セクハラ、パワハラだけでなく、領収書精算のごまかし、職場のプリンターで個人の年賀状を印刷するなどのちいさな不正もみな、人が少ない深夜に起こります。深夜のオフィスに立ち入れないようにすることで、発生を防止できます。

また、セクハラ・パワハラにはストレスが大きく関わっています。本来はパワハラをするような人ではなかったのに、長時間労働の組織に入ることでパワハラ体質になってしまう、あるいは、真面目だった人が裏でセクハラをするようになる。ストレスによるメンタル疾患の一つなのですが、こうしたモラル崩壊も睡眠を十分にとることで改善できるのです。

一度家に持ち帰ることで、「やっています」というアピールのための仕事はしなくて良くなりますし、職場の同調圧力で「何となく」してしまう残業もなくなります。ストレスから、他人に当たり散らすパワハラやセクハラが生まれる、負の連鎖も止められるはずです。

こうした取り組みを、まずどこか進んだ省庁からトライしていただけないかと考えています。どこかが一歩踏み出せば、そうした事例にならう省庁が出てきます。

国会議員の方はみなさん、平日は国会、週末は地元と、精力的に動きまわっていらっしゃいますが、年中人に見られているし、有権者からのプレッシャーもあります。国会議員も、やはり休息がないとストレスで脳が疲弊し、官僚や秘書さんにきつく当たるようになります。ですから国会議員や大臣も、夜10時には帰宅していただき、率先して休息を取ること、時間外にどうしても必要な仕事の指示だけに留めていただくことが大事です。

コロナ禍は、これまでなかなか変わらなかった霞が関や永田町の働き方を変えるきっかけになります。デジタル化は、菅内閣の目玉の一つでもあるはずです。各大臣、国会議員の皆さんには、ここでデジタル化を進め、真に健康に働ける日本、働きがいのある職場づくりにリーダーシップを発揮し、大きく変えてほしいと願っています。

構成=西川修一

小室 淑恵(こむろ・よしえ)
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長

資生堂を退社後、2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを設立。1000社以上の企業や自治体の働き方改革コンサルティングを手掛け、残業を削減し業績を向上させてきた。その傍ら、残業時間の上限規制を政財界に働きかけるなど社会変革活動を続ける。著書に『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』(毎日新聞出版)『プレイングマネジャー「残業ゼロ」の仕事術』(ダイヤモンド社)他多数。