ペーパーレス化の遅れも露呈
回線や機器などのインフラが整っていなかっただけでなく、ペーパーレスが進んでいなかったことも、テレワークの大きなハードルになっていたようです。オフィスにしかない紙書類を必要とする業務でテレワークができなかったり、大臣や議員、省庁幹部への説明に大量の紙資料が求められたりと、民間企業に比べるとまだまだ業務の多くが紙で進められていました。
これは、セキュリティの面でも非常に危ないと思います。書類が保管されている建物が災害などで倒壊したり、火事にあったりしたら、すべての情報が消失しかねません。しかも、紙は簡単に改ざんできてしまう。紙はリスクも高いといえます。
ペーパーレス化でも、環境省と経産省が他省庁を大きくリードしていました。経産省については、元NTT社員の世耕弘成参議院議員が大臣だった2016年から19年にペーパーレスが進みました。私も各省庁の審議会の委員を務めましたが、一番早く審議会がiPadを利用してペーパーレスで進められるようになったのは経産省でした。経産省は民間企業とのやりとりが多いですし、人材交流も活発です。やはり、閉じている省庁ほど遅れているという印象ですね。
テレワークで仕事ができない本当の理由
「自宅からだとネットにつながらない」「リモートでは必要な書類を見ることができない」「議員や幹部に提示する資料を印刷しないといけない」、だから「テレワークでは仕事が進まない」という結論を出してしまった省庁も多いようです。しかし、それは本質的な議論ではないはず。仕事が進まないのはテレワークのせいではなく、貧弱なインフラやペーパーレス化の遅れのせい。そこを議論し、変えていく必要があります。
そもそも霞が関の政府機関は、例えば大地震のような緊急事態が起こって、全員が登庁できなくなるというケースも想定しておく必要があります。しかし、そのための準備がほとんどの省庁でできていなかったことが、コロナ禍で露呈してしまいました。国民に外出自粛を要請する一方で、霞が関ではテレワークが進まず、多くの職員が2日に1回は出勤していたという状態。中にはほぼ毎日出勤していたという省庁もありました。
霞が関がブラックだと、損をするのは私たち
小泉環境相からは、「こうした調査を、省庁のデジタル化進捗の“通知簿”にして、毎年各大臣に配ってもらえないか」といった提案をもらっています。確かに、「毎年夏になるとワーク・ライフバランス社の調査がある」ということになれば、新任の大臣もデジタル化の歩みを進めるはずです。そして毎回調査結果を各大臣にお持ちして、「どんなリーダーシップを発揮してどんな取り組みをしたのか/今後していくのか」をお聞きしたいと思います。
今回調査を行ったことについては、SNSやネットニュースへのコメントでも、非常にポジティブな反応が多くて驚いています。官僚を応援する声も多く、「官僚がやりがいを持って健康的に働けない国に未来はない」といった書き込みもあってうれしく思いました。
もともと私たちが一番伝えたかったのはこれだったんです。国の行政を支える官庁を、優秀な人たちが疲弊して辞めていくような職場にしてしまったら、一番損するのは私たち国民です。今すぐデジタル化を進め、働き方改革を実行してもらわなければいけません。